有機化学を学び始めた人向け!反応機構図・電子の矢印を書くためのポイントを解説していきたいと思います。 反応機構がうまく書けない、とお困りの方は是非読んでみてください! 前回からの続きです。
▼ 反応機構の書き方
まずは簡単な例で見てみましょう。「シクロヘキセンへの臭化水素酸の付加反応」をとりあげます。この反応はどのような機構で起こっているのでしょうか?電子の矢印で反応機構を書くプロセスを、できるだけ詳細に解説してみます。
STEP 0. まず考えるべきは、どれとどれが反応するのか?ということです。臭素も実は負電荷を持つ求核種となりえますが、唯一の求電子種である水素とは既に結合しています。ですので、意味のある反応を開始させるためには、オレフィンと水素が最初に反応する必要があります。
STEP 1. オレフィンから電子対(2個の電子)を水素に与える、ということを示す曲がった矢印を書きます。水素のもつ電子はすでに2電子であるため、オクテット則を満たすべく、同時に2電子分が別の場所に移動しなくてはなりません。この場合は、より電気陰性度の高い臭素原子に電子が流れ込むことになります。そのような電子の流れを示す、曲がった矢印も書きます。直線矢印を挟んで右側には、反応後に生じる化学種を書きます。帯電の仕方・形式電荷に注意します。中性分子同士が反応しているので、トータルで見れば電気的に中性でなくてはなりません。
STEP 2. STEP 0.と同じように、引き続きどれとどれが反応するのか、を考えます。このとき反応系には、新しくできたカチオン種・アニオン種と、既に存在している中性化学種があります。通常はもっとも反応性が高いもの同士が反応します。この場合は、カルボカチオンとブロモアニオンです。
STEP 3. ブロモアニオン(求核種)から、カルボカチオン(求電子種)へと電子が流れ込む矢印を書きます。これで求める生成物ができました。より正確には、立体化学も考慮に入れた構造式を書く必要があります。ただ、立体化学は別に考えた方が分かりやすいので、今回はとりあえず横に置いておきます。
全部まとめるとこうなります。
次回は、もう少し複雑な反応機構を書いてみましょう。 (2008.8.7. cosine)
▼参考、関連文献 「電子の矢印」記法を訓練できる演習書 化学同人
有機合成化学協会(編集)
発売日:2005-10
有機化学の世界が広がる演習書。
お勧め 学部生から大学院生、研究者まで使える問題集 Springer-Verlag
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自分の手を使って紙の上で構造を書きながら練習する事をお勧め
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