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接着って?

   

「接着」という単語はもちろんみなさん知っているであろう。

では、「接着って何?」って聞かれたら、どうであろうか?モノとモノがくっつくこと…。ここまでは何とかセーフだろう。じゃあどうやって…?

かなりお手上げの人がでてくると思う。接着にもいろいろな「接着」があるのである。

今回は接着の原理について基礎から間単に考えてみよう!

 

その前に接着というものの歴史から触れてみることにする。

 

接着の歴史

 

 接着という概念はいつから始まったのであろうか?

 

 旧約聖書『創世記』の中ではノアの方舟やバベルの塔の防水にアスファルトが接着剤、シーリング剤として使われていたという記述がある。又紀元前3000年ごろウル(現在のイラク)では「ウルの軍旗」呼ばれる木造物に、貝や石灰石のモザイクがアスファルトで接着されていたそうである。その他、古代エジプトではパピルスをつなぐのにアカキアニロティカという木の樹液が使われていたという。

このように接着という考えは紀元前という遠い昔からあった技術であることがわかる。

 

 日本では、平安時代に米糊を利用して手紙の封をしたり、屏風や御張を作る粘料として使ったという記述がある。ニカワなどもこのころ登場するが、高価だったので日本では米糊が普及することになる。

 

 そして、米糊、ニカワ、ロウ、鳥もち、うるし、しっくい、アスファルトなどの天然物接着剤は、平安時代には基本的には完成の域に達していて、その後明治の文明開化までは、新しい接着剤が外国から紹介されることもなくこれらの伝統的な接着剤がより磨きをかけられ生活のなかに広く浸透していった。

 

 このように今世紀初頭までは外国をみても、天然産である、樹脂、ゴム、たんぱく質、れき青質、デンプンなどを接着剤して多用してきたのだが、合成樹脂合成ゴムの出現により、接着業界は大きく塗り替えられた。これらは接着剤の高性能化、大量生産化、工業利用を飛躍的に推し進め、1900年には合板、波型紙ボードの誕生、1930年には粘着テープの出現、1940年には航空機へ接着剤が導入された。1950年にはエポキシ樹脂系接着剤が登場、機械、金属分野での接着剤の利用が一段と加速された。

 

 接着の技術というものは電気、機械、土木、建築、木材、化学、航空・宇宙などの多くの分野と結びついている。人類が文明を築きあげるについては、接着というのは必須の技術であったといっても過言ではないだろう。

 

接着の原理

 

 それでは「接着」ということはどういうことだろうか?言葉の意味としては2つある。

 

1) 接着剤を用いて物体を結合すること(bond)

2) 2つの表面が何らかの界面力により結合している状態、つまりくっつくという現象(adhesion)

 

結合する(bond)のためにはくっつくという現象(adhesion)がなくてはならない。

それではくっつくという現象(adhesion)はどのように起こるのだろうか?下に接着の原理説をいくつか示す。

 

A、機械的接合説

 

接着体(被着体)は少なからず凹凸がある。その凹部に接着剤が流れ込み固化して界面が結合するというものである。(図1)簡単に言えば釘や木の根っ子が刺さる原理と同じことである。これは、船の錨が海底に刺さり船を停泊させるのに似ていることからアンカー効果(投錨効果)と呼ばれている。

 

 

厳密に(もっとミクロで)言えば分子同士が絡み合っている、図2のような形になっている。例えばゴム糊でゴムを接着したりする場合、ゴム糊中の溶剤がゴムの表面を膨潤させ、被着体のゴム分子とゴム糊中のゴム分子が均一に混ざり合うことにより、接着される。またホットメルト接着剤でポリエチレンを接着するときも同様と考えられている。

 

図1 機械的結合

 

図2

 

B、化学結合説

 

 例えばウレタン接着剤で木綿などの繊維を接着するときはウレタン中のイソシアネート基が繊維中のヒドロキシル基と共有結合で結合するものと考えられている。(図3-1)

 またデンプン糊と紙が接着するときは、紙を構成するセルロースのヒドロキシル基とデンプン中のヒドロキシル機基が水素結合で結びつくためとされている。(図3-2)

   

図3-1 共有結合          図3-2 水素結合

 

C、分極説

 中性の物質であっても、ミクロ的に見ると、分子中には、マイナス電荷とプラス電荷が存在している。

 このため、接着剤分子と被着体分子は、各々がもつマイナス、プラス電荷が引きあうことにより結合できる。(図3)酢酸ビニル接着剤が木材を接着できるのはこの力によるといわれている。

図3 分極による結合

 

 これらの接着が行われるには、接着するもの(接着体)に接着剤の分子が接近しなければならない。そうでないと、接着剤分子との結合は起こらないからだ。これにはマクロでいう「ぬれ(witting)」が重要な役割を持っている。例えば、水性接着剤でプラスチックが接着しにくいのはプラスチックが水をはじいてしまうからだ(ぬれが起こらない)

 

 このように昔から多くの研究がなされていているが、いまだ100%明らかにはなってはいない。それでもいくつかの説が提唱されており、ほぼ間違いないというところまできているのだが、実際、接着の際に起きる現象はそれらの機構が複雑に重なり合っていると考えられ、ひとつに説明はできない。

 

以上接着の原理についてわかったでしょうか?

 

 話は変わりますが、実際接着剤というものは当時、接着するという目的で開発されたものでも、その後接着剤以外の用途に使われることが多いそうだ。その理由は、接着剤は重要なものだが、それだけを作るための化学プラントのコストを考えると他の用途を見つけないとやっていけないということ。

 例えば、エポキシ樹脂は元々金属用の樹脂として開発されたが、現在では純粋に接着剤として使われるのは、生産量の5%に過ぎない。あとの95%は塗料やプラスチックとして使われているらしい。

 

今回はどんな人でもわかるようにかなり簡単に書いたつもりです。

この先の話(接着材料、合成方法etc・・)は後々ゆっくりと話していきたいと思います。

 

有機って面白いよね!!(ってこれは有機?)                              

  (by ブレビコミン2000/9/16up)

 

参考、関連文献

 

・新接着の秘密 本山卓彦 著  ダイヤモンド社(1984)

・接着と接着剤 小野昌孝 著  日本規格協会(1989)

・接着と材料 日本材料科学界編  裳華房(1996) 

・接着剤    本山卓彦・永田宏二 著  工業調査会(1988)

 

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我々の生活と密接な関係にある接着剤。応用分野も電子・電気機器・航空機・自動車・鉄道車輌の輸送機器、家屋・家具から身の回り品と多彩な反面、ハウスシック、素材のリサイクルなどの課題もある。接着技術の最新動向を解説。