ポリマー電池 |
電池の定義は化学的エネルギーを電気的エネルギーにする直接変換装置である。これは、1800年にボルタがアレクサンドロ・ボルタが実験したパイル電池に始まっている。そして近年、ノートパソコン、携帯電話等の様々な携帯端末の急速な発達によりそれを動かすための動力源、つまり電池が重要なものとなってきた。
そこで今回は有機化学に多少なりとも関係のありそうな、最近注目を浴びている新しい電池の一つであるポリマー電池について、電池としての有用性、将来性について簡単に述べてみよう。しかし、どんな電池が使える電池、有用な電池と言えるのか?まずそれがわからなければ、さっぱりわからないと思うのでそこから話してみよう。
▼電池の特性
電池に必要な特性をそれぞれ簡単に下にあげる。
<エネルギー密度> 電池はエネルギー源であるから、そのエネルギーが大きくないと話にならない。しかし、大きさ重さが増せばエネルギー量が増えるのは当然のことであるから、そのエネルギーの大きさを単位体積当たり(Wh/l)あるいは単位重量当たり(Wh/kg)のエネルギー密度で表す。よって同じ条件で測ったエネルギー密度が大きいほど高性能の電池である。
<出力> 瞬間的にどれだけの電力が取り出せるかということを見るもので、パソコンのドライブ駆動や携帯電話でのパルス受信では重要なもの。例えば電池ではないが電気二重層コンデンサはこれが高いがエネルギー密度は低い。
<サイクル特性> 二次電池(充電できる電池のこと)に対する特性。簡単に言えば何回充電できるかである。もちろんこれが少なければ何度も電池を取り替えなくてはならないので、サイクルが大きい方が望ましい。二次電池は最低でも300回以上は欲しいところである。
<温度特性> 使用環境温度に対する特性。例えば高温になったときに使用不可能になってしまうようであれば条件によってつかえない電池となる。
<安全性> たまに電池による事故が報道されるが、電池はエネルギーの塊なので安全に注意しなければならない。特に二次電池の場合は使用期間が長期にわたるので注意が必要。電池を製品化するときに一番注意されるところである。現在よく使われているリチウムイオン電池には多少安全性の面で問題が残っている。
<形状自由性> 薄型軽量化、つまり面積や形が自由に変えれるという特性。これも携帯端末や電気自動車に搭載する場合最も重要項となる。現在、薄型化はかなり進んでいるが大面積化が困難な状況。
<価格、環境問題> 大手メーカー多数が採用し、一般的に広まることが必要。一般的になり大量生産されなければ、価格も安きならない。このためには特出した性質を持っていなければならないが。また、環境に対する配慮も大きな問題となっている。
他にも必要な特性はいくつかあれば、これらの条件を満たし現存の電池を超えていれば高性能電池といえる。このことを頭にいれてポリマー電池について考えてみよう。
▼ポリマー電池とは
一言にポリマー電池といってもポリマー電池も使われる材料によって多種多様である。普通(元来)の電池は正極が金属酸化物、負極が金属、電解質が水溶液あるいは有機溶媒でした。これらの正極、負極、電解質のどれか一つまたはすべてにポリマーを使用している電池をポリマー電池という。また、どこに使われるかによって大きく図1のように分類される。ポリマーのような高分子材料を代わりに使うことによって、電池の薄型軽量化が期待できる。
図1 ポリマー電池の種類
▼ポリマー電池の長所・短所
上にあげた各電池について長所・短所を表1に挙げてみよう。
表1 ポリマー電池の長所と短所
ゲルSPEは実用段階にも入っている電池であり、現在リチウム系化合物を正極に使ったポリマーリチウム電池が主流となっている。また硫黄系正極のポリマー電池も成長が早く注目されている。オールポリマー電池(導電性高分子)はエネルギー密度があまり高くないということに問題があるが、安全性に加えて、出力が高いことで電気二重層コンデンサの代替として期待されている。
▼ポリマー電池の将来性
ポリマー電池の中でも特にゲルSPEのポリマーリチウム電池は大手機器メーカーが開発を進め、各種携帯端末に採用されてきている。例えば、現在販売されている、NECのB5ノートパソコン「LavieMX」には液晶モニターの裏に厚さ数ミリ程度のポリマーリチウム電池を採用している。通常のリチウムイオン電池と組み合わせることによって最長11時間の駆動時間が確保できるという。その他、すべて導電性高分子を使った電池もNEC等で使用段階で今年末または来年から実用化されるという。白川教授の導電性高分子の研究のノーベル化学賞受賞でこの分野の研究は日本でもさらに加速されるであろう。
近年、電池の開発は急速に進み、1990年ごろに比べて性能は何倍も向上した。しかし、電池が使われる電子機器の性能は何百倍も向上している。結果、電子機器に対する電池のウェイトは年々上がっている。これによりさらに電池の重要性が高まり、新規電池の開発に各企業が力をいれている。今回紹介したポリマー電池もその一つであるがそのほかにも様々な電池があるので、どの電池が生き残るかわからないが、電池の分野は現在、または将来注目される分野のひとつであろう。
今回は有機的な要素は全くなかったが、高分子材料を使っているということで許してください。しかし、過去無機材料と思われていた電池も、有機(高分子)材料を使っている。有機、無機という分野で語れなくなってきている現在。難しいですね。でもとりあえず、 有機って面白いよね!! (2000/11 by ブレビコミン)
▼参考、関連文献
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