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石油化学 

 

(1)概論 

 

 現代社会は石油に大きく依存して、成り立っている。20世紀後半になっての高度経済成長はこの石油の大量消費によって達成されたとも言える。

 

 では、この石油はどのようにしてできたのであろうか?石油が何からできたかについては「生物起源説」と「非生物起源説」の2つがあるが、今日では生物起源説が支持されている。生物起源説の中にもいくつかの説があるが、「ケロジェン根源説」というものが主流になっている。 ケロジェンというのは、堆積岩中の溶剤などに溶けない不溶性有機物に与えられた総称である。

 

 ケロジェン根源説とは、大昔の生物の死骸が土,泥などとともに堆積し,地下に埋没していく過程でケロジェンを経て液体炭化水素になっていくというものである。有機物の深度が浅いところでまずケロジェンが生成し、その後,土,泥の堆積によって地下深くに埋没し、地下の熱で熟成し石油になったと考えられている。

 

 次に、石油(原油)の成分についてみてみる。石油の主成分である炭化水素は常温で気体であるC1〜C4からC50の液体炭化水素まで広い幅で分布している。炭化水素の種類としては、鎖状パラフィン、シクロパラフィン(ナフテン)、および芳香族からなる。ナフテンは、シクロペンタン環とシクロヘキサン環の縮合環がほとんどである。

 

 現在石油はどのように使われているのだろうか?まず、世界での1年間の資源消費量をあげる。

 

石油

36.78億kl

石炭

35.80億トン

木材

34.40億m2

7.53億トン

セメント

13.30億トン

表1 世界での資源消費量

 

石油は、資源消費量の筆頭となっている。このような大量消費が進んだのはここ40〜50年のことである。次に、日本における石油の消費量をあげる。

 

原油処理量

24231万kl

燃料油

24529万kl

LPガス

1977万トン

石油化学用ナフサ

4435万kl

アスファルト

581.7万トン

潤滑油

243.1万トン

表2 日本での石油の処理量と用途別消費量

 

(2)石油製品

 

 石油製品の性質、特徴を紹介する。

 

i)LPガス

 LPガスは液化石油ガスの略で、プロパンが主成分であることからプロパンガスとも呼ばれている。

 炭素数が3,4の炭化水素のプロパン、プロピレン、ブタン、ブチレンを成分とし、常温常圧では気体であるが少し加圧すると液化するため、取り扱う場合は液体である。

 これらの分子は、原油中に含まれているものもあるが、燃料の製造工程である接触分解、接触改質などで分解ガスとして生成してくるものも多い。分解ガスとして生成するものにはブチレン、プロピレンも含まれているが、原油中には含まれていない。

 日本では、年間2000万トン弱消費しているが、国内で生産されているものはその約1/4程度でほかは輸入に頼っている。

 このLPガスは都市ガスの普及していない地域中心として家庭用燃料として広く普及している。

 

ii)ガソリン

 ガソリンには、自動車ガソリン、航空ガソリン、工業ガソリンなどの種類があるが、そのほとんどは自動車ガソリンである。

 

 自動車ガソリンの消費量は5306万klで燃料油の中の21.6%を占めている。ガソリンは種々のガソリン基材を混合することによってオクタン価、揮発性を調整いている。

 

 オクタン価とは、ガソリンにはアンチノック性(ノッキングを起こしにくい性質)が必要であり、それを表した指数である。イソオクタンを100、nーヘプタンを0として両者の混合によるん燃料と比較して、イソオクタンの容量%であらわす。オクタン価は炭化水素の分岐枝が多いほど高くなる。このオクタン価の違いによってレギュラーガソリン(約90)、ハイオクガソリン(約100)などに分けられている。

 

 自動車は運転条件にかかわらずガソリンと空気の混合蒸気が作られるため、適当な揮発性が必要になってくる。この揮発性が適当でないと、エンジンに不具合が出てくる。揮発性が低すぎるとエンジンがかかりにくくなったり、加速性が低下したりする。また揮発性が高すぎると、相対的に空気(酸素)の量がへり、アイドリング不良や加速性不良が見られる。このため、ガソリンには冬用ガソリンと夏用ガソリンがあり、冬用ガソリンは夏用よりも揮発性がやや高く調整されている。

 

iii)灯油

 灯油は主に石油ストーブに用いられる暖房用燃料で炭素数がC9〜C15の炭化水素からなっている。燃料油全体の12.1%占めている。欧米では民間用の暖房用燃料として石炭、天然ガスもあるので、日本ほど灯油の比率は高くない。  

 

 暖房用機器の中で灯油の品質の影響を受けやすいのは石油ストーブで、灯油の品質は石油ストーブに合わされている。品質の中でも最も重要なものは燃焼性である。蒸留性状の高沸点側が高すぎないことと芳香族化合物があまり多くないことである。芳香族化合物は分子内の炭素が占める割合が高いため、燃焼する際にすすを伴うためである(燃焼の際のすすの生成傾向は芳香族>ナフテン>パラフィン)。

 

 また、室内などにおける取り扱いの安全性の点で、引火点は40度以上と規定されている。さらに、二酸化硫黄ガス汚染を考え、硫黄分は0.008%(80ppm)以下に定められている(市販の灯油は40ppm程度)。

 

iv)軽油

 軽油はディーゼル車の燃料を中心として船舶、ガスタービンなどにも用いられている。日本ではあまり多くないがヨーロッパでは軽油が自動車燃料の50%をこえているくにもある。

 

 軽油に必要な主な性質は着火性と低温流動性である。着火点はディーゼルエンジンのノッキングを防ぐために低すぎないことが必要である。これはセタン指数で表され45〜50以上に規定されている。芳香族成分が多いとセタン価は低くなる。軽油は低温で成分のn−パラフィンがワックスの結晶を析出するため、ディーゼル車の冬季における低温始動の際にワックスのフィルタへの目詰まりが問題になる。

 

v)重油

 重油は発電用、工業用、船舶用に用いられている。重油にはA,B,Cの3種類があり、A重油は軽油と灯油から調整されている。B重油はほとんど生産されていない。C重油は原油の分留の際の残油と軽油から調整されている。

 

 重油の用途は内燃機関用と外燃機用に分けられ、必要な性質は両者で異なる。性質については、粘度、硫黄分、流動点、残留炭素分、灰分、引火点、水分などが問題になる。粘度はポンプなどでの移送の際の取り扱い、硫黄分は大気汚染、腐食磨耗、残留炭素分は燃焼阻害などの問題があるためである。

 

                                 (2000/8/27 by ボンビコール)