最近の論文から〜ノルゾアンタミンの全合成2〜 |
それでは、最近の論文から〜ノルゾアンタミンの全合成1〜に続いて実際のノルゾアンタミンの合成について説明していきましょう。まずは、ノルゾアンタミンの逆合成解析から(Scheme 1)。
▼ 逆合成解析
Scheme 1. ノルゾアンタミン(1)の逆合成解析
ノルゾアンタミン(1)の逆合成解析をScheme 1 に示します。ノルゾアンタミン(1)は26のアミノアセタール化によって得ることができます。26は20と22のカップリング反応、、アミナール化によって合成できると考えました。アルキンセグメント20は12より、12はトリエン10の分子内Diels-Alder反応によって3つの不斉点を立体選択的に構築します。また重要中間体となるトリエン10は、3とビニル銅試薬とフラン環との3成分連結反応により得られた生成物より合成できると考えました。さて、この合成においては、10の分子内Diels-Alder反応の立体選択性、また、残った9位のメチル基をいかに立体選択的に導入するかが検討課題となると考えられます。それでは実際の合成を簡単に説明します。
▼ Synthesis of ABC ring system of Norzoanthamine(1) by intramolecular Diels-Alder Reaction
(R)-5-メチルシクロヘキセノン3を出発物質とし3成分連結反応を試みました。すなわち、ビニル銅試薬の立体選択的Michael反応、多置換フラルアルデヒドとのアルドール反応を行い、1:1のジアステレオマーとして5を合成しました。3段階を経て3置換シクロヘキサノンを立体選択的に構築した後、LiBEt3Hを作用させβアルコール7を単一のジアステレオマーとして得ています。
▼ Construction of asymmetric carbon center at the C9 position
(訂正:2行目化合物15→17、15→18です。)
C9位の不斉点導入には非常に苦労しています。
まず12のケトンを立体選択的に還元し、ラクトン13に変換しました。
▼ Total Synthesis of Norzoanthamine (1)
Scheme 4. ノルゾアンタミンの全合成
最後は2つのアミノアセタール部位の構築によるノルゾアンタミンの全合成です。
以上のように骨粗鬆症の治療薬のリード化合物となりうるノルゾアンタミン(1)を41段階総収率3.5%(1段階 92%)という効率的なルートで不斉全合成を達成することができた。
(2005..1. 2 ブレビコミン)
▼参考、関連文献
・天然物の全合成―Total synthesis of natural products 約50人の日本の研究者を選び、各人の自薦した天然物の全合成の構造図を収録。本文は構造図、化学式、英文で構成。
・先端化学シリーズ〈5〉海洋天然物/錯体/コンビナトリアル/全合成 化学関連各分野の世界最先端研究の現状と課題および将来動向についてまとめ、21世紀の化学研究の潮流を探り、将来の化学研究のシーズを浮き彫りにする。
・Classics in Total Synthesis II 前書のClassics in Total Synthesis : Targets, Strategies, Methods同様全合成の興味深い論文を詳しく、反応から合成法まで解説。Classicsと名前はついているが、最近合成された天然物ばかりで最新の全合成、合成戦略を体系的に学習できる。研究室のゼミの題材等にも最適であるため、ぜひもっておきたい1冊である。
▼関連リンク
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【用語ミニ解説】
■逆合成解析
retrosynthetic analysis。合成ターゲットの一部分を切断していき、反応前の化合物を導き出して行くこと。ノーベル化学賞受賞者E.J.Coreyが提唱した考え方。
単純な一置換分子あるいは二置換分子からもっと複雑な分子までを含む、幅広い分子の効率的な有機合成戦略の設計ができるように、逆合成解析を基盤として解説した明解なテキスト。
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