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NMR〜超基礎編〜

    

 NMR(nuclear magnetic resonance、核磁気共鳴)は有機化学にとって必須のものである。今回は導入である超基礎編としてこのNMRとはどんなものか?ということを図を使い簡単に解説しよう。

 

NMRとは?

 

 約50年ほど前核磁気共鳴現象が見出され、近年複雑な天然物や人工高分子が興味の中心であり、これらの複雑な有機化合物の分子構造解析を可能にしたものがNMR分光法である。有機化合物を扱う研究をしている方なら毎日のように使っているもので、これは、一言で言うと「スペクトルから分子を構成する原子1つ1つを区別し見ることができ、分子を構成する原子同士のつながりがわかる」という画期的な手法である。それでは実際どのように分子を見ているのだろうか?次にNMRの原理について解説する。

 

NMR分光法原理

 

a.分光法原理

 

 言葉だけでいっても難しいと思うので、NMR分光法の原理を図に示した。順を追って説明してみよう。

 

図1 外部磁場中での核スピンの様子(図2のサンプル管の中)

※核磁気モーメント(核スピン)は形式上図のように↑で表している。

 

 1、外部から何も磁場がかかっていない状態である。原子核は正電荷をもち、回転しているため磁場が発生している。その結果、原子核はある物理量と方向を持っている。これを核磁気モーメント(核スピン)という。このときは核スピンも方向はばらばらで回転している。

 2、外部から強力な磁石により↑方向に磁場をかけた状態である。核スピンは磁場の方向↓と逆の方向↓の2種類に分かれる。

 3、磁場と逆方向の核スピンの方が磁場に逆らっているので、エネルギーが高くなる。それに従いエネルギーの大きさに分けた。ここで、ラジオ波領域の電磁波をあててエネルギー差に相当するエネルギーを与えてやると図のように上のエネルギー順位に跳ね上がる。この電磁波の吸収・放出過程、つまり核磁気共鳴を見ているものがNMR分光法である

 

b.装置の概要

 

この原理を使って測定する装置の概略を図2に示した。

図のような装置を使って測定する。

試験管(サンプル管)に磁場をかけ、高周波発振器によってラジオ波をあてると、上記に示した原理に従って核磁気共鳴が起こり、試料を取り巻いているコイルに微小電流が放出する。この電流が、増幅器によって増幅され最終的に図2の右端のようなピークとなって記録される。

図2 NMR装置の概念図

c.測定される核種

 

 それではどんなものを測定するのだろうか?NMRでは核種によって大きく様子のことなるスペクトルが得られる。有機化合物の解析の際よく用いられるのは水素核1H炭素核13CについてのNMRスペクトルである。観測している核種について、それぞれ1H-NMR、13C-NMRなどと表記する。この二つは有機化合物においては必ず測定されており、膨大なデータが蓄積されている。水素核1Hは最も感度のよい核の一つであり、試料が数mgあれば十分きれいなスペクトルが得られる。

 

 以上、今回は簡単な理論についてまとめてみました。ある程度知っている人にとっては物足りないものになったかもしれません。今後、用語編、解析編、使用編、シュミレーション編、応用編と5つに渡って詳しく解説していきたいと思っています。

 有機って面白いよね!!

(2000/11/26 byブレビコミン)

 

参考、関連文献

 

 

・これならわかるNMR 安藤喬志 化学同人 (1997)

・有機化合物のスペクトルによる同定法(1999)