前回はChemDrawの紹介から始まりメニューバーと基本的な作図について紹介しました。今回は、実際の描画を三つほど例に挙げ紹介していきたいと思います。なお、Versionの違いによって若干の違いがあります。筆者のはver. 6.0参考文献のはver. 7.0最新版はver. 9.0(2005.2月現在)とバラバラですがお手持ちのChemDrawを開いていろいろ試してみてください。
1. 非局在化環の作図、構造の整形、化学構造式の情報を貼り付ける〜カテキンの構造を例にして
2. 二重結合を書く、構造をコピー&ペーストする、原子ラベルの配置を変える、結合、原子に色をつける〜Heck反応の触媒サイクルを例にして
3. イオン、ラジカルの表記、多中心結合を書く、赤い枠を消す、列や行を揃える、等間隔に並べる、微調整を行う、グループ化する〜パラジウムのカチオン性π-アリル錯体を経由する求核置換反応を例にして
4. 舟形シクロヘキサンを書く
5. 他のChemDraw文書から構造をコピーしたときのメッセージについて
▼ 非局在化環の作図 構造の整形
化学構造式の情報を貼り付ける カテキンの構造を例にして
構造として緑茶をはじめとする多くの植物性食品に含まれるポリフェノールの一種、カテキンを例にしてみます。無駄に環の形変えてますが。。。
非局在化環の作図
環ツールを選択すると、通常は二重結合と単結合が交互に並ぶ結合が書けますが、Alt+クリックにより非局在化環を作画できます。
構造の整形
構造をバランスよくきれいに書くにはこのツールが欠かせません。選択した状態でStructure-Clean up Structureか下図に示すTool Barのボタンをクリックすれば結合長、結合角が設定のものになります。
化学構造式の情報を貼り付ける
普段の実験では分子量の計算が不要になるし、MS測定や元素分析測定前にも便利です。構造を選択し、Structure-Analyze Structure(ver. 6.0)、view-Analysis Window(ver. 7.0)で表示、各種設定後Pasteで文書内に貼り付けることができます。下図はTool BarのAnalyzeボタンです。
▼ 二重結合を書く
構造をコピー&ペーストする 原子ラベルの配置を変える 結合、原子に色をつける
Heck反応の触媒サイクルを例にして
下記のようなHeck反応の触媒サイクルを描くことを例にします。
二重結合を書く
二重結合を描く場合は、多重結合ツールを使う以外に、単結合を二回繰り返す(なぞる感覚で)ことによっても描くことができます。また、三重結合なら三回繰り返してください。二重結合の配置も微調整が可能で、二重結合上でクリックするとその配置が変わっていきます。
構造をコピー&ペーストする
構造を選択してEdit-copyそしてPasteや、Ctrl+CそしてCtrl+Vのショートカットキーを紹介したいのではありません。←もちろんこの方法でもできますが。構造を選択してAlt+ドラッグしてもコピーできますよ。(修正:ChemDraw
7.0 以降ではこの機能はCtrl+ドラッグになっているようです。 )
原子ラベルの配置を変える
L2Pdの部分に注目してください。この箇所を選択した状態でText-Flush Leftで左あわせ。Centeredで中央あわせ。Flush Rightで右あわせです。
結合、原子に色をつける
色を変えたい箇所を選択し、メニューバーのColorで希望の色を選択すれば変えられます。Wordといったソフトと同じ感覚ですね。規定の色ではなく、もっと違った色を使いたいときはFile-Color Palette-New Color(ver. 6.0)で新たな色を作成できます。
▼ イオン、ラジカルの表記
多中心結合を書く 赤い枠を消す 列や行を揃える、等間隔に並べる、
微調整を行う グループ化する パラジウムのカチオン性π-アリル錯体を経由する求核置換反応を例にして
適当でないかもしれませんが下記の反応を描くことを例にしてみます。
多中心結合を書く
分子の部分構造に原子が結合しているような構造を化学的に正しく描くことができます。
構造を選択した状態でStructure-Add Multi-Center Attachmentで構造の中心に結合点(*)が表示されます。その点から結合ツールで結合を伸ばします。
イオン、ラジカルの表記
電荷の指定には二通りあります。ツールパレット(Chemical Symbols)を使用するか、もしくは原子ラベルの一部にするかです。下図はver. 6のchemical Symbols)です。ラジカルはツールパレット(Chemical Symbols)を使って表記してください。
赤い枠を消す
求核剤(Nucleophile)を示す -Nu はChemDrawの省略記号に登録されていないのか、価数の不正などを自動検出する赤い枠が表示されます。印刷時には赤い枠は表示されませんがTool-Show Chemical Warnings(ver. 6.0) View-Chemical Warnings(ver. 7.0)のチェックを外せばこの表示は消えます。
列や行を揃える、等間隔に並べる、微調整をおこなう
揃えたい箇所を選択した状態でObject-Align-、各種選択できます。あまり文で説明しなくとも絵のとおりです。揃える対象は構造式だけではありません。反応の矢印もテキストも同等に揃えることができます。このときShiftを押しながら選択すると便利です。また、水平方向に等間隔に並べるにはObject-Distribute-Horizontally、垂直方向に等間隔に並べるにはObject-Distribute-Verticallyです。
出発原料と反応矢印、反応生成物を選択し、Object-Align-T/B centersで一直線上に並べ、そのままObject-Distribute-Horizontallyで等間隔にする。といったところがよく行う流れではないでしょうか?細かな微調整には、これまたオブジェクトを選択しキーボードの↑←↓→で移動可能です。Ctrlを押しながら矢印キーを押すと移動速度が早くなります。
グループ化する
パワーポイントなどを使っている方は知っていると思いますがグループ化の機能がChemDrawにもあります。この場合、パラジウムのカチオン性π-アリル錯体は複数のオブジェクトで構成されています。そこでObject-Groupでひとかたまりの構造としておくと移動の際、便利です。
ツールパレット-環ツールにはいす形のシクロヘキサンが二種類ありますが、舟形もちゃんとあります。
ツールパレット-Templete-Conformers
空のChemDraw文書に、設定の異なるChemDraw文書で作成された構造をコピー&ペーストしようとするとこんなメッセージが表示されます。
これは貼り付け先のChemDraw文書(例ではUntitled ASC Document 1996-5)とコピー元(例ではimage.cdx)の分子作画設定が異なるからです。貼り付け先の設定を維持するためにはDon't Change Settingsを選択してください。しかし、期待する結果と違ってもEdit-UndoもしくはCtrl+Zで元に戻るのでご安心を。
いかだったでしょうか?普段使っている人には物足りないページかもしれません。私が初めてChemDrawを使ったのは卒研配属時でした。パソコンを使うのは慣れていましたがこのソフトには戸惑いました。しかも表示が英語だし・・・右往左往するのは実験(有機合成化学)だけではなかったわけです(泣)。幸いなことに、いい先輩たちに恵まれなんとか使えるようになり、卒業できました。そこで、配属時のことを思い出しつつ覚えたことを記事にしてみることにしました。なので対象は研究室配属したての四年生です。
内容の多くはChemDraw7.0徹底活用ガイド 有田正博 化学同人 (2002)を参考にしています。この本はChemDrawの他にもChemFinder Ultra, Chem 3Dについても記載があります。使う機会がある方は参考にしてみてはいかがでしょうか?
(2005. 2. 13 by
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・ChemDraw7.0徹底活用ガイド 有田正博 化学同人
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