抗体触媒 |
抗体触媒(Catalytic Antibodies)とは何だろうか?今回はこの抗体触媒について簡単に説明してみよう。
触媒はそれ自身は変化をしないが、他の物質の化学反応のなかだちとなって、反応の速度を速めたり遅らせたりする物質であり、現在はかなり複雑系でアンモニア合成の際の鉄化合物や、油脂に水素添加する際のニッケルなどの金属単体や、有機金属化合物、また生体内の酵素も一種の触媒である。 そして抗体触媒は、文字通り抗体(抗原の侵入を受けた生体がその刺激で作り出すタンパク質の総称。)による触媒なのである。
▼ 概要と原理
抗体触媒は反応自体を任意に設計し、その反応を思い通りの選択性で触媒させることの出来る、つまりオーダーメイドの人工触媒として、有機化学はもちろん、幅広い分野の科学者の注目を集めている。 そもそも抗体触媒の走りは、1986年にSchultzとLernerグループが初めて酵素のような反応経路で抗体が化学反応を触媒できることを示したことである。抗体触媒の触媒作用は酵素触媒反応と同様に反応の遷移状態を安定化するということにある。化学反応の遷移状態に結合しそれを安定化することによって反応の活性化エネルギーを減少させ反応を促進させる。
▼ 有機合成への利用
Romesbergらは1998年有機合成で重要な、Diels-Alder触媒性抗体と、その生殖系列の前駆物質と比較し、たった1つの体細胞の変異によって触媒の親和性や活性を増加させることを示した。またBarbas、Lerner等の研究者は2000年Aldol反応とDiels-Aldol反応に触媒する抗体を作製した。アルドール供与体、アルドール受容体としてさまざまなものを実験しているが、いずれも良い結果が出ている。ここではアルドール反応を触媒する抗体38C2、33F12を示すにとどめる。(図1)
図1
詳しく知りたい方は下記の文献をのぞいて見てほしい。
▼ 問題点
・抗体を得るためのスクリーニングに多くの時間がかかることで、大量の抗体を得ることは困難であること ・抗体の分子量が大きすぎて実際の反応を行う際には大量の抗体を用いなければならないこと
以上簡単に抗体触媒について書いてみたが、研究者たちは抗体触媒は様々な反応を触媒することを示し、又その選択性の高さも注目すべき点であることを述べている。今後も注目できる分野である。 有機って面白いよね!! (by ブレビコミン 10/15up)
▼参考、関連文献
|