カルボニル |
▼ カルボニルとは
カルボニルとは誰もが知っているように炭素−酸素二重結合を持った官能基のことである(図1)。
図1 カルボニル基
カルボニル基は酸素がδ−、炭素がδ+に分極しているため反応性が高いだけでなく、α位の水素の酸性度が高いためあまり強くない塩基でも水素を引き抜くことができる。また、酸化する事によってカルボン酸、還元することによってアルコールに変換できる。このようにカルボニル基は反応性の高さから、有機合成には欠かせない官能基の一つである。
▼ カルボニルの反応
前述のようにカルボニル基の反応は大きく分けて3種類に分けることが出来る。
1、δ+に分極した炭素への塩基(アニオン)の求核攻撃による反応
図2
これはカルボニル基の反応の中でも最も使われている反応である。カルボニル基は平面構造をとっているために立体障害を受けにくく、カルボニル炭素周辺がすいているため求核攻撃を受けやすい。
図3 カルボニル基の立体構造(2,4−ジメチル−3−ペンタノン)
中心に位置している炭素(灰色)がカルボニル炭素であり、赤色が酸素である。カルボニル基に立体的に混んでいるイソプロピル基が2つついているが、図3を見れば分かるようにカルボニル基周辺の立体はすいていることが分かる。
カルボニル根元への求核攻撃後に進行するルートは2種類に分けることができ、1つ目はカルボニル炭素の隣接位に脱離しやすい官能基が存在する場合に図4のように酸素-炭素二重結合が生成し脱離能の良い(脱離後に安定である)官能基が脱離する反応である。
図4
脱離能の良い官能基としてはハロゲン、アルコキシ基などがある。
二つ目に酸素アニオンの求核攻撃が進行する場合(図5)がある。
図5
2、δ−に分極した酸素のロ-ンペアの求核攻撃による反応
このタイプの反応は分子内反応に多く見られる。
図5
3、α位の水素の塩基による引き抜きによる反応
カルボニル基のα位の水素の酸性度は高い(pKa=19〜20)。これは中間体は共鳴安定化することが出来るためである。そのため塩基を用いると容易にプロトン引き抜きが進行し図6に示す中間体を経て反応が進行する。
図6
これらを用いた反応の例として交差アルドール反応を挙げる。
図7 交差アルドール反応
第一段階で化合物1のα位のプロトンが引き抜かれ化合物2となる。この化合物2の酸素−炭素結合がもう一度二重結合となりケトン3のカルボニル炭素に求核攻撃し化合物3となった後に酸素アニオンが水の水素を取りアルコールとなる。
▼ カルボニルの合成
カルボニル基を持つ化合物としてはアルデヒド、ケトン、カルボン酸などが上げられる。それぞれの合成反応を表1に挙げる(ODOOSより)。
表1 カルボニル化合物の合成反応
▼ カルボニル分析方法
カルボニル基の分析方法として最も有名なものはIRの1700cm-1付近に現れる鋭い吸収である(図5)。
図5 カルボニル基のIRにおける吸収(SDBSweb:http://riodb.aist.go.jp/SDBS/2001/02/12 )
IRにおいて1700cm-1付近の鋭い吸収はカルボニル化合物特有のものであるため、IRで最も確認しやすい官能基の一つとなっている。他にこの位置に吸収を持つ化合物がないために微妙な吸収のシフトも分かりやすく隣接位の構造を決定することも出来る。
カルボニル化合物は反応性が高い、合成方法がたくさんある、分析しやすいと3拍子そろったすばらしい官能基ではないだろうか?有機って面白いよね!! (by ボンビコール)
▼参考、関連文献
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【用語ミニ解説】
■酸性度
酸性度定数 Ka あるいは pKa の大小で評価する。
各種化合物の酸性度(pka)がわかる。非常に重宝するサイト。
■IR
infrared absorption spectrometry(赤外吸収スペクトル)。 で試料に赤外線をあて吸収された赤外吸収スペクトルを測定することによって定性を行う分析方法のひとつである。有機物質はすべて赤外域に固有の吸収スペクトルを持っているので主に有機物質の測定に用いられている。 (IRの基礎知識)
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