[スポンサーリンク]

M

向山・鈴木グリコシル化反応 Mukaiyama-Suzuki Glycosylation

[スポンサーリンク]

概要

単離保存可能なフッ化糖をグリコシルドナーとしてグリコシル化を行う手法。向山らによって開発された原型はカチオン性スズルイス酸を活性化剤として用いていたが、後にカチオン性ジルコノセンもしくはハフノセン錯体をハードルイス酸として用いるより高活性な条件(鈴木法)が開発され、適用範囲が拡大した。

フッ化糖は他にもLiClO4や強いブレンステッド酸(TfOHなど)でも活性化可能である。

基本文献

<review>

 

反応機構

他のハロゲン化糖にくらべてフッ化糖は熱/化学安定性が高い。これはC-F結合エネルギーの高さに起因している。(C-F: 552 kJ/mol, C-Cl: 397 kJ/mol, C-Br: 280 kJ/mol)。この安定性ゆえにフッ化糖はシリカゲルカラムクロマトグラフィでの精製が可能である。

 

反応例

Benanomicin Bの全合成[1]

mukaiyama_glycosylation_2

Gilvocarcin Mの全合成[2]:フェノールをグリコシルアクセプターとして用いると、高温でO→C転位を起こしてC-グリコシド化合物が得られる。

mukaiyama_glycosylation_3

 

 

実験のコツ

過塩素酸銀のほうが活性は高いが、爆発性が懸念事項となる。まずは銀トリフラートから使用することが推奨される。

 

参考文献

  1. (a) Ohmori, K.; Tamiya, M.; Kitamura, M.; Kato, H.; Oorui, M.; Suzuki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 3871. DOI: 10.1002/anie.200501210 (b) Tamiya, M.; Ohmori, K.; Kitamura, M.; Kato, H.; Arai, T.; Oorui, M.; Suzuki, K. Chem. Eur. J. 2007, 13, 9791. DOI: 10.1002/chem.200700863
  2. (a) Matsumoto, T.; Hosoya, T.; Suzuki, K. J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 3568. DOI: 10.1021/ja00035a069 (b) Hosoya, T.; Takashiro, E.; Matsumoto, T.; Suzuki, K. J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 1004. DOI: 10.1021/ja00082a023

 

関連書籍

[amazonjs asin=”3527317805″ locale=”JP” title=”Handbook of Chemical Glycosylation: Advances in Stereoselectivity and Therapeutic Relevance”][amazonjs asin=”3642268242″ locale=”JP” title=”Reactivity Tuning in Oligosaccharide Assembly (Topics in Current Chemistry)”]

 

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. MT-スルホン MT-Sulfone
  2. ホウ素アート錯体の1,2-メタレート転位 1,2-Metalla…
  3. ワートン反応 Wharton Reaction
  4. 生体共役反応 Bioconjugation
  5. ジュリア・リスゴー オレフィン合成 Julia-Lythgoe …
  6. 脱水素型クロスカップリング Cross Dehydrogenat…
  7. アフマトヴィッチ反応 Achmatowicz Reaction
  8. クノール ピロール合成 Knorr Pyrrole Synthe…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 福井 謙一 Kenichi Fukui
  2. 希望する研究開発職への転職を実現 「短い在籍期間」の不利を克服したビジョンマッチング
  3. ユーコミン酸 (eucomic acid)
  4. 「細胞専用の非水溶媒」という概念を構築
  5. 化学研究ライフハック:情報収集の機会損失を減らす「Read It Later」
  6. アメリカで Ph. D. を取る –希望研究室にメールを送るの巻– (実践編)
  7. 最終面接で内定をもらう人の共通点について考えてみた
  8. HKUST-1: ベンゼンが囲むケージ状構造体
  9. ポリエチレンなど合成樹脂、値上げ浸透
  10. 第43回「はっ!」と気づいたときの喜びを味わい続けたい – 高橋 雅英 教授

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

ブテンを原料に天然物のコードを紡ぐ ―新触媒が拓く医薬リード分子の迅速プログラム合成―

第 687回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 有機合成化学教室 (金井…

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP