概要
水素化ジイソブチルアルミニウム(Diisobutylaluminium hydride: DIBAL, DIBAL-H)はHAliBu2の示性式を持つ還元剤。二量体として存在する。
アルミニウム上に空軌道をもつため、ルイス酸性を有する。この特性ゆえに、水素化リチウムアルミニウム(LAH)などのアート型還元剤とは異なる用途の還元反応に適用がある。
ニトリルはイミンに還元され、これは加水分解によりアルデヒドに導ける。このため、ニトリルはアルデヒド等価体と見なせる。
アセタールはエーテルへと変換出来る。たとえばベンジリデンアセタールをDIBALで処理すると、立体的に混み合った部位がBnエーテル化された生成物が得られる。(PMB保護を参照)
また低温で反応を行うと、エステルをアルデヒドに部分還元できる場合もあるが、一般にはそれほど容易ではない。2当量以上のDIBALでアルコールにまで還元した後に、アルデヒドへ酸化する方が、工程数は長くなるが確実である。例外的に5または6員環ラクトンの場合、ラクトールへの部分還元は容易である。近年、
NaOtBuを添加したアート型還元剤がこの部分還元目的に有効であることが示されている。
アルキンに対してはヒドロメタル化を起こす。
n-BuLiを添加してアート型還元剤LiAlH(i-Bu)2(n-Bu)とすることで、還元様式の異なる強力な還元剤として使用することも出来る。
基本文献
- Ziegler, K., Martin, H.; Krupp, F. Ann. 1960, 629, 14. DOI: 10.1002/jlac.19606290103.
反応機構
反応例
アルキンに対してヒドロメタル化を起こすことが知られている。
DIBAL+NaOtBu(SDBBA)は、氷冷下という簡便な条件下にエステルをアルデヒドに還元する。[1]
実験手順
実験のコツ・テクニック
参考文献
[1] Song, J. I.; An, D. K. Chem. Lett. 2007, 36, 886. doi:10.1246/cl.2007.886
関連反応
- 水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム/ナトリウム/カリウム L/N/K-Selectride
- 水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム Red-Al
- シュワルツ試薬 Schwartz’s Reagent
- 水素化ホウ素ナトリウム Sodium Borohydride
- ボラン錯体 Borane Complex (BH3・L)
- 脱水素型クロスカップリング Cross Dehydrogenative Coupling (CDC)
- 水素化リチウムアルミニウム Lithium Alminum Hydride (LAH)
- ストライカー試薬 Stryker’s Reagent
- ヒドロメタル化 Hydrometalation
- エステル、アミド、ニトリルの金属水素化物による部分還元 Partial Reduction of Esters, Amides nad Nitriles with Metal Hydride
- 金属水素化物による還元 Reduction with Metal Hydride
- ルーシェ還元 Luche Reduction
- ブラウンヒドロホウ素化反応 Brown Hydroboration
関連書籍
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外部リンク
- Reducing Agents (organic-chemistry.org)
- Hydride Reductions of Aldehydes and Ketones
- ヒドリド還元 – Wikipedia
- 水素化ジイソブチルアルミニウム – Wikipedia
- 1,2-還元と1,4-還元 (有機って面白いよね!)
- Diisobutylaluminium hydride – Wikipedia