[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

ウィッティヒ転位 Wittig Rearrangement

[スポンサーリンク]

wittig_rearr_2.gifwittig_rearr_1.gif

  • 概要

塩基によるエーテル置換基のアニオン促進型転位反応。

種々の置換基について転位しやすさの順位はアリル~ベンジル~第3級アルキル>第2級アルキル>第1級アルキル>メチル>フェニルである。

アリル基は最も転位しやすいが、このケースは特に[2,3]-Wittig転位と呼ばれる。アルキルリチウムなどの強塩基を当量以上用いる必要があるため、様々な副反応を起こしやすく、基質を選ぶことも少なくない。複雑な化合物に適用するときは、アニオン隣の置換基(R1)を共役系or電子求引基にしておき、脱プロトン化の位置を定めることが成功の鍵となる。

反応はほぼ立体特異的に進行する。不斉中心をもつ化合物の場合は、不斉転写が可能。

基本文献

  • Wittig, G.; Lohmann, L. Ann. 1942, 550, 260.
  • Wittig, G. Experientia 1958, 14, 389.
  • Cast, J. et al. J. Chem. Soc. 1960, 3521.
  • Schollkopf, U.; Fellenberger, K. Ber. 1966698, 80.
  • Makisumi, Y.; Notzumoto, S. Tetrahedron Lett. 19667, 6393. doi:10.1016/S0040-4039(00)70184-5
  • Nakai, T.; Mikami, K. Chem. Rev. 198686, 885. DOI: 10.1021/cr00075a011
  • Marshall, J. A. Comp. Org. Syn. 1991, 3, 975.
  • Nakai, T.; Mikami, K.Org. React. 199446, 105.
  • Mikami, K.; Nakai, T. Synthesis 1994, 594. DOI: 10.1055/s-1994-25529

反応機構

[2,3]-Wittig転位は熱的許容の[2,3]-sigmatropic機構で協奏的に進行するとされる。その一方で[1,2]-Wittig転位は様々な実験的証拠からラジカル経路で進行する説が有力とされている。
wittig_rearr_4.gif

反応例

しばしば[1,2]-転位と[2,3]-転位は競合する。温度を適切に保つことで[1,2]-転位を抑えることができる。
wittig_rearr_3.gif
合成化学的観点からは、①vicinal位の二つの不斉点を一挙に構築可能 ②Claisen転位などと同様に遠隔位への不斉転写が可能という特性が重宝される。以下の例のように金属交換を経ることでもアニオンは生成可能。
wittig_rearr_5.gif
キラルなアミン配位子を用いる不斉[1,2]-Wittig転位[1] wittig_rearr_6.gif
Lewis塩基触媒による[2,3]-Wittig転位[2]:熱的条件下ではClaisen転位の方が優先する。
wittig_rearr_7.gif
フッ素アニオン促進型[1.2]-Wittig転位[3] wittig_rearr_8.gif

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] Tomooka, K.; Yamamoto, K.; Nakai, T. Angew. Chem. Int. Ed. 1999, 38, 3741. [abstract]
[2] Sato, Y.; Fujisawa, H.; Mukaiyama, T. Chem. Lett. 200534, 588. doi:10.1246/cl.2005.588
[3] Meleczka, Jr., R. E.; Geng, F. Org. Lett. 19991, 1111. DOI: 10.1021/ol9909132

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4759808752″ locale=”JP” title=”ペリ環状反応―第三の有機反応機構”]

 

関連リンク

関連記事

  1. カルボニル-エン反応(プリンス反応) Carbonyl-Ene …
  2. バートン・ケロッグ反応 Barton-Kellogg React…
  3. スティーヴンス転位 Stevens Rearrangement
  4. ブンテ塩~無臭の含硫黄ビルディングブロック~
  5. 歪み促進型アジド-アルキン付加環化 SPAAC Reaction…
  6. 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基 Fmoc Prot…
  7. 有機リチウム試薬 Organolithium Reagents
  8. フィッツィンガー キノリン合成 Pfitzinger Quino…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 生物学的等価体 Bioisostere
  2. 日本薬学会第137年会  付設展示会ケムステキャンペーン
  3. 天然の保護基!
  4. コールドスプレーイオン化質量分析法 Cold Spray Ionization Mass Spectrometry (CSI-MS)
  5. 化学者だって数学するっつーの! :定常状態と変数分離
  6. 相次ぐ有毒植物による食中毒と放射性物質に関連した事件
  7. 有機合成化学協会誌2020年9月号:キラルナフタレン多量体・PNNP四座配位子・π共役系有機分子・フェンタニル混入ヘロイン・プロオリゴ型核酸医薬
  8. 金属酸化物ナノ粒子触媒の「水の酸化反応に対する駆動力」の実験的観測
  9. 位置選択的C-H酸化による1,3-ジオールの合成
  10. 先制医療 -実現のための医学研究-

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー