概要
- 金属銅を用いるアリールハライド類の還元的カップリング。ビアリール化合物を得るための手法の一つ。特別な基質コンビネーションを除き、ホモカップリング目的で用いられる。
- ハライドはI > Br > Clの順、かつ電子吸引性置換基を持つ基質ほど反応が効率よく進行する。
- ニッケル(0)を使ったカップリング反応も知られている。
基本文献
- Ullmann, F.; Bielecki, J. Chem. Ber. 1901, 34, 2174. doi:10.1002/cber.190103402141
- Ullmann, F. Ann. 1904, 332, 38.
Review
- Fanta, P. E. Chem. Rev. 1946, 38, 139. DOI: 10.1021/cr60119a004
- Fanta, P. E. Synthesis 1974, 9. doi:10.1055/s-1974-23219
- Hassan,J.; Sevignon, M.; Gozzi,C.; Schulz, E.: Lemaire, M. Chem. Rev. 2002, 102, 1359. DOI: 10.1021/cr000664r
- Nelson, T.D.; Crouch, R. D. Org. React. 2004, 63, 265.
- Sambiagio, C.; Marsden, S. P.; Blacker, A. J.; McGowan, P. C. Chem. Soc. Rev. 2014, 43, 3525. DOI: 10.1039/C3CS60289C
反応機構
Ullmann反応の機構の詳細はまだ明らかではないが、一電子移動を経由する機構、もしくはCu(III)を経由する機構が想定されている。以下にCu(III)機構を示す。
反応の歴史
ドイツの化学者フリッツ・ウルマンによって、1901年に開発された。金属銅を使用してハロゲン化アリール同士をホモカップリングさせてビフェニル誘導体を合成する反応である。
反応例
- 2-チオフェンカルボン酸銅(CuTC)を用いるとUllmannカップリングが室温で効率よく進行する。官能基受容性の高さも特筆すべき点。試薬は市販されている。[1]
- ジアステレオ選択的Ullmannカップリングの例[2]
- ニッケル(0)によるUllmannカップリングは、より穏和な条件で行うことが可能である。[3]
- 通常Ni(0)は酸素に極めて不安定であり、厳密な脱気条件が要求される。亜鉛をニッケルの共還元剤として用いることで、より容易な操作で行える。[4]ニッケルを触媒量に減ずることも基質によっては可能。[5]
実験手順
実験のコツ・テクニック
参考文献
- Zhang, S.; Zhang, D.; Liebeskind, L. S. J. Org. Chem.1997, 62, 2312. DOI: 10.1021/jo9700078
- Nelson, T. D.; Meyers, A. I. Tetrahedron Lett. 1994,35, 3259. doi:10.1016/S0040-4039(00)76879-1
- Reisch, H. A.; Enkelmann, V.; Scherf, U. J. Org. Chem.1999, 64, 655. DOI: 10.1021/jo9817523
- Kende, A. S.; Liebeskind, L. S.; Braitsch, D. M. Tetrahedron Lett. 1975, 16, 3375. doi:10.1016/S0040-4039(00)91402-3
- Iyoda, M.; Otsuka, H.; Sato, K.; Nisato, N.; Oda, M. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1990, 63, 80. doi:10.1246/bcsj.63.80
関連反応
- クロム(η6-アレーン)カルボニル錯体 Cr(η6-arene)(CO)3 Complex
- ゴールドバーグ アミノ化反応 Goldberg Amination
- チャン・ラム・エヴァンス カップリング Chan-Lam-Evans Coupling
- グレーサー反応 Glaser Reaction
- カストロ・ステファンス カップリング Castro-Stephens Coupling
- ウルツ反応 Wurtz Reaction
- バックワルド・ハートウィグ クロスカップリング Buchwald-Hartwig Cross Coupling
- ウィリアムソンエーテル合成 Williamson ether synthesis
関連書籍
外部リンク
- ウルマン反応 (Wikipedia日本)
- Ullmann Reaction (Wikipedia)
- Ullmann Reaction (organic-chemistry.org)
- Copper(I)-thiophene-2-carboxylate – Wikipedia