アルコール→アルデヒド、ケトン
概要
クロロクロム酸ピリジニウム(Pyridinium Chlorochromate; PCC)またはニクロム酸ピリジニウム(Pyridinium
Dichromate; PDC)を用いるアルコールの酸化は穏和な条件下で進行し、不安定な官能基を持つ化合物にも適応可能である。Jones酸化やSarett-Collins酸化がケトンの合成に適しているのに対し、これらの試薬、特にPCCはアルデヒドの合成に適している。
PCCは酸性であるため酸に弱い官能基は冒されてしまう。一方で、PDCは中性条件で使用できる。
DMF中で第一級アルコールのPDC酸化を行うと、アリルアルコールなどの場合を除き、カルボン酸まで酸化される。
近年では関連反応欄に示すような、より穏和で無毒な条件下に反応が進行する試薬が開発され、クロム酸化剤の有用性は薄れつつある。
基本文献
- PCC: Corey, E. J.; Suggs, J. W. Tetrahedron Lett. 1975, 16, 2647. doi:10.1016/S0040-4039(00)75204-X
- PDC: Corey, E. J.; Schmidt, G. Tetrahedron Lett. 1979, 20, 399. doi:10.1016/S0040-4039(01)93515-4
- Ley, S. V.; Madin, A. Comprehensive Organic Synthesis 1991, 7, 253. (Review)
- Luzzio, F. A. Org. React. 1998, 53, 1. (Review)
反応機構
基本的にはSarett-Collins酸化と同様。
反応例
Scopadulcic Acid Aの合成[1]
TMSOOTMS(ビストリメチルシリルペルオキシド)などを再酸化剤として用い、有毒なクロムを触媒量に減じる工夫もなされている。
実験手順
実験のコツ・テクニック
※PCC・PDC単独では反応の進行に伴いタール状残渣が生じてくる。これに生成物が取り込まれてしまい、収率が低下することが多い。反応溶液にセライトやシリカゲル、モレキュラーシーブスなどを加えておくとこれを改善できる。
参考文献
[1] Fox, M. E.; Li, C; Marino, J. P.; Overman, L. E. J. Am. Chem.Soc. 1999, 121, 5467. DOI: 10.1021/ja990404v
関連反応
- ウルマンエーテル合成 Ullmann Ether Synthesis
- サレット・コリンズ酸化 Sarett-Collins Oxidation
- 植村酸化 Uemura Oxidation
- アルブライト・ゴールドマン酸化 Albright-Goldman Oxidation
- オッペナウアー酸化 Oppenauer Oxidation
- パリック・デーリング酸化 Parikh-Doering Oxidation
- フィッツナー・モファット酸化 Pfitzner-Moffatt Oxidation
- ピニック(クラウス)酸化 Pinnick(Kraus) Oxidation
- パーキン反応 Perkin Reaction
- コーリー・キム酸化 Corey-Kim Oxidation
- 向山酸化 Mukaiyama Oxidation
- ジョーンズ酸化 Jones Oxidation
- TEMPO酸化 TEMPO Oxidation
- TPAP(レイ・グリフィス)酸化 TPAP (Ley-Griffith)Oxidation
- デス・マーチン酸化 Dess-Martin Oxidation
- スワーン酸化 Swern Oxidation
関連書籍
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外部リンク
- クロロクロム酸ピリジニウム (Wikipedia日本)
- Chromic Acid (Wikipedia)
- Pyridinium Chlorochromate (Wikipedia)
- Pyridinium Dichromate (Wikipedia)
- 酸化クロム (Wikipedia日本)
- クロム酸酸化 (Wikipedia日本)
- Oxidations (PDF)