概要
触媒量のプロリンを用いて直接的不斉アルドール反応を行う手法。
プロリン触媒による分子内不斉アルドール反応は古くから知られていたが、2000年、List、Barbas、Lernerの三人は分子間でも不斉アルドール反応を進行させることを見出した。現在一大研究領域となっている有機分子触媒のさきがけ的研究である。
基本文献
- List, B.; Lerner, R. A.; Barbas, C. F., III J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 2395. DOI: 10.1021/ja994280y
- Notz, W.; List, B. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 7386. DOI: 10.1021/ja001460v
- List, B.; Pojarliev, P.; Castello, C. Org. Lett. 2001, 3, 573. DOI: 10.1021/ol006976y
- Sakthivel, K.; Notz, W.; Bui, T.; Barbas, C. F., III J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 5260. DOI: 10.1021/ja010037z
反応機構
以下に示すような反応触媒サイクルが提唱されている。ケトン(ドナー)とプロリンが形成するエナミン中間体が求核剤として働く。カルボン酸の酸性プロトンはアルデヒド(アクセプター)の担持および活性化に寄与する。
反応例
2種のアルデヒド間の直接的交差アルドール反応が実現されている。この反応形式は金属触媒では達成されていない(2011年4月現在)。[1]
本アルドール反応を鍵工程として用いる、保護六炭糖類の化学合成法がMacMillanらによって報告されている[2]。報告されている立体選択的合成法の中では、最短のルートを実現している。生成物は適度に保護され扱いやすく、窒素・硫黄の導入や13C標識も容易。応用性の高い優れた方法といえる。
実験手順
ヒドロキシケトンをドナーとするアルドール反応[3]
実験のコツ・テクニック
※平衡を生成物側に偏らせるため、大過剰のケトンが通常は必要となる。
参考文献
[1] Northrup, A. B.; MacMillan, D. W. C. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 6798. DOI: 10.1021/ja0262378 [2] Northrup, A. B.; MacMillan, D. W. C. Science 2004, 305, 1752. DOI: 10.1126/science.1101710 [3] Sakthivel, K.; Notz, W.; Bui, T.; Barbas, C. F., III J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 5260. DOI: 10.1021/ja010037z
関連反応
- マクミラン触媒 MacMillan’s Catalyst
- 還元的アルドール反応 Reductive Aldol Reaction
- ストーク エナミン Stork Enamine
- ヘイオース・パリッシュ・エダー・ザウアー・ウィーチャート反応 Hajos-Parrish-Eder-Sauer-Wiechert Reaction
- 向山アルドール反応 Mukaiyama Aldol Reaction
- マンニッヒ反応 Mannich Reaction
- 交差アルドール反応 Cross Aldol Reaction
- (古典的)アルドール反応 (Classical) Aldol Reaction
関連書籍
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外部リンク
- アルドール反応 (Wikipedia日本)
- Aldol Reaction(Wikipedia)
- プロリン(Wikipedia日本)
- Proline (Wikipedia)
- Aldol Reaction (organic-chemistry.org)
- 有機って面白いよね!!
- 「もっとも単純な触媒『プロリン』」
- 究極の不斉触媒・プロリン(有機化学美術館)
- 有機分子触媒 (Wikipedia日本)
- Organocatalysis (Wikipedia)