[スポンサーリンク]

B

バックワルド・ハートウィグ クロスカップリング Buchwald-Hartwig Cross Coupling

[スポンサーリンク]

概要

アリールハライド・アリールトリフラートとアミン・アルコキシド間の、パラジウム触媒によるクロスカップリング反応。dppf、BINAPのような二座配位子および強塩基の存在が反応促進の鍵となっている。

高価なパラジウム触媒を必要とするものの、求核置換反応では合成不可能なアリールアミン・アリールエーテルが直接合成できる数少ない方法論である。

医薬品・材料領域を始めとし、多官能基化芳香族化合物の潜在的需要はきわめて高く、最近開発された反応の中でも実用的なものの一つといえる。

基本文献

<Review>

開発の歴史

1983年群馬大学の右田らはパラジウム触媒存在下、臭化ベンゼンとジエチルアミノトリブチルすずが反応し、アミノ化反応が進行することを報告した(右田反応:Kosugi, M.; Kameyama, M.; Migita, T. Chem. Lett., 1983, 927. DOI: 10.1246/cl.1983.927)。右田反応は本反応の原型であったにも関わらず、約10年ものあいだ全く注目されなかった。

Toshihiko Migita

Toshihiko Migita

1994年、米国の化学者HartwigらとBuchwaldらが独立して、右田反応の反応機構解明およびジエチルアミノトリブチルスズの反応内調製による簡便化を図った。その1年後、両者はアミノ化剤としてジエチルトリブチルスズを用いずアミンを用いる触媒反応を報告した。これを皮切りに新しい触媒の開発、基質一般性の拡大(各種アミン、フェノール誘導体、その他ヘテロ元素など)がHartwig、Buchwaldを含め世界中の化学者によって行われ、現在では医薬品合成にも用いられる最重要反応の1つとなっている。

Stephen L. BuchwaldとJohn F. Hartwig

Stephen L. BuchwaldとJohn F. Hartwig

 

反応機構

buchwald_hartwig_coupling_2.gif

反応例

低反応性のアリールクロライドを用いる反応[1]

buchwald_hartwig_coupling_3.gif

BINAPの大量合成法[2]:類似の条件は、リンや硫黄の導入にも用いることが可能。これらの場合には、それほど強力な塩基を必要としない。[2]

buchwald_hartwig_coupling_4.gif

 

安価なアンモニアを窒素源とし、保護体を経ずにダイレクトにアニリン誘導体が合成可能。しかし強塩基が等量必要となってしまう欠点がある。[3]

2014-09-13_23-35-57

水酸化物無機塩とのクロスカップリングを進行させる条件の開発によって、ダイレクトにフェノールの合成が可能 [3]

2014-09-13_23-36-06

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] Zim, D.; Buchwald, S. L. Org. Lett. 2003, 5, 2413. DOI: 10.1021/ol034561h
[2] Org. Synth. 2000, 76, 6.
[3] Shen, Q.; Hartwig, J. F. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 10028. DOI: 10.1021/ja064005t
[4] Anderson, K. W.; Ikawa, T.; Tundel, R. E.; Buchwald, S. L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 10694. DOI: 10.1021/ja0639719

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”3527331549″ locale=”JP” title=”Metal Catalyzed Cross-Coupling Reactions and More, 3 Volume Set”][amazonjs asin=”3642075762″ locale=”JP” title=”Cross-Coupling Reactions: A Practical Guide (Topics in Current Chemistry)”][amazonjs asin=”3540421750″ locale=”JP” title=”Cross-Coupling Reactions: A Practical Guide (Topics in Current Chemistry)”]

 

外部リンク

関連記事

  1. ジョンソン・クライゼン転位 Johnson-Claisen Re…
  2. 超原子価ヨウ素 Hypervalent Iodine
  3. アセタール還元によるエーテル合成 Ether Synthesis…
  4. 原子移動ラジカル重合 Atom Transfer Radical…
  5. フィンケルシュタイン反応 Finkelstein Reactio…
  6. アシロイン縮合 Acyloin Condensation
  7. バーチ還元 Birch Reduction
  8. 四酸化オスミウム Osmium Tetroxide (OsO4)…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 「誰がそのシャツを縫うんだい」~新材料・新製品と廃棄物のはざま~ 2
  2. 実験・数理・機械学習の融合による触媒理論の開拓
  3. ロイ・ペリアナ Roy A. Periana
  4. シリカゲルはメタノールに溶けるのか?
  5. 大麻から作られる医薬品がアメリカでオーファンドラッグとして認証へ
  6. 元素名を名字にお持ちの方〜
  7. 1,2-還元と1,4-還元
  8. ヌノ・マウリド Nuno Maulide
  9. ケムステも出ます!サイエンスアゴラ2013
  10. 芳香族トリフラートからアリールラジカルを生成する

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー