[スポンサーリンク]

B

バイヤー・ビリガー酸化 Baeyer-Villiger Oxidation

[スポンサーリンク]

ケトン→カルボン酸誘導体

概要

ケトンを過酸で酸化してエステルに変換する反応。非対称ケトンでは級数の高いアルキル基が酸素上に転位する。転位したアルキル基上の立体化学は保持される。

酸性度の高い過酸のほうがBaeyer-Villiger酸化を起こしやすく、反応性はCH3COOOH< C6H5COOOH < mCPBA < p-NO2C6H4COOOH< CF3COOOHの順になるが、取り扱いやすさ、入手しやすさの点からmCPBAが最も良く用いられる。

基本文献

Review

開発の歴史

1899年ドイツミュンヘン大学のBaeyerとその学生であったVilligerは、環状ケトン(メントン、カルボメントン、カンファー)にペルオキシ一硫酸カリウム(KHSO5)を作用させると、収率40〜50%で対応するラクトンが得られることを報告した。Baeyerは本反応の発見以外にもインディゴの化学合成、フタレイン染料の発見、フェノール樹脂合成手法の開発などにより「有機染料およびヒドロ芳香族化合物の研究」によりノーベル化学賞を受賞している(1905年)。

Adolf von Baeyerと Victor Villiger

Adolf von Baeyerと Victor Villiger

反応機構

参考:J.Am. Chem. Soc.1972,94, 4189; J.Org. Chem. 2007, 72, 3031.
BV_oxi_2.gif

反応例

  • [1])転位する炭素の立体化学は保持される。
    one-ac2.gif
  • [2][3])Baeyer-Villiger酸化は通常電子豊富な炭素から優先的に転位する。 one-ac5.gif
    BV_oxi_5.gif
  • Vilsmeier反応などで容易に調整できるベンズアルデヒド誘導体は、Baeyer-Villiger条件で酸化を受け、引き続く加水分解を経る事でフェノールへ変換できる(Dakin反応)[4]
    BV_oxi_6.gif
  • Tetrodotoxinの合成における適用例[5]BV_oxi_7.gif
  • 有機分子触媒を用いる触媒的不斉Baeyer-Villiger酸化 [6] BV_oxi_8.gif

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

  1.  大学院講義有機化学II P180
  2. Lawlor, M. D.; Lee, T. W.; Danheiser, R. L. J. Org. Chem. 2000, 65, 4375. DOI:10.1021/jo000227c
  3. Hassner, A.; Pinnick, H. W.; Ansell, J. M. J. Org. Chem. 1978, 43, 1774. DOI: 10.1021/jo00403a032 
  4. Dakin, H. D. Am. Chem. J. 1909, 42, 477.
  5. Kishi, Y.; Fukuyama, T.; Aratani, M.; Nakatsubo, F.; Goto, T.; Inoue, S.; Tanino, H.; Sugiura, S.; Kakoi, H. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 9219. DOI: 10.1021/ja00781a039
  6. Ding, K. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 200847, 2840. DOI: 10.1002/anie.200705932

関連反応

関連書籍

[amazonjs asin=”3639192656″ locale=”JP” title=”Asymmetric Baeyer-Villiger Oxidations Using Biocatalysts: Development and Application of 2nd Generation of Biocatalysts”][amazonjs asin=”3639020936″ locale=”JP” title=”Enzymatic Baeyer-villiger Oxidation for Natural Product Synthesis”]

外部リンク

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 野依不斉水素化反応 Noyori Asymmetric Hydr…
  2. 一重項酸素 Singlet Oxygen
  3. アシル系保護基 Acyl Protective Group
  4. 2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル保護基 Troc Pro…
  5. ルボトム酸化 Rubottom Oxidation
  6. クラブトリー触媒 Crabtree’s Cataly…
  7. ターボグリニャール試薬 Turbo Grignard Reage…
  8. フォルスター・デッカー アミン合成 Forster-Decker…

注目情報

ピックアップ記事

  1. Carl Boschの人生 その9
  2. ポンコツ博士の海外奮闘録XXV ~博士,海外留学を終える~
  3. 史跡 佐渡金山
  4. 劉 龍 Ryong Ryoo
  5. 化学の力で迷路を解く!
  6. 徹底比較 特許と論文の違い ~明細書、審査編~
  7. 掃除してますか?FTIR-DRIFTチャンバー
  8. 林 雄二郎 Yujiro Hayashi
  9. ヴィクター・スニーカス Victor A. Snieckus
  10. ミヤコシンA (miyakosyne A)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP