タミフル(tamiflu)は経口投与可能な抗インフルエンザ薬。正式名称はオセルタミビル(oseltamivir)。
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歴史・用途
1996年に米ギリアード・サイエンス社が開発に成功し、スイスロシュ社がライセンス取得後、製造・販売している。ノイラミニダーゼ(neuraminidase: NA)と呼ばれる酵素を阻害することで、宿主細胞からの脱殻を抑止し、ウィルス増殖を抑える。タミフルはプロドラッグの一種であり、エチルエステル部が加水分解されたカルボン酸体が活性体としてはたらく。活性体はノイラミニダーゼ基質のカチオン性遷移状態を模倣している。
他の抗インフルエンザ薬としてはグラクソ・スミスクラインのリレンザ(Relenza: ザナミビル,zanamivir)やノバルティス ファーマのシンメトレル(Symmetrel: amantadine, 塩酸アマンタジン)などが知られている。吸入投与が必須であるリレンザや、A型にしか効果のないシンメトレルに比べ、タミフルは経口投与可能であり、かつA型B型ともに効くというメリットがある。
鳥インフルエンザの変異による人への感染、その特効薬の欠如による世界的大流行(パンデミック)が現在もっとも危惧されている。[1]これに備えて各国がタミフルの備蓄を始めており、爆発的な売り上げを示している。
現在タミフルは天然から得られるシキミ酸(shikimic acid)から10段階かけて合成・供給されている(下図)。工程数の長さゆえ、必要量を供給するためには時間がかかり、世界的に品不足の状態に陥っている。近年、ロシュ社は米バール・ファーマスーティカルズ、米マイラン・ラボラトリーズ、イスラエルのテバ・ファーマシューティカル、インドのランバクシー・ラボラトリーズの4社にライセンス提供することを決定した。
シキミ酸は、大腸菌発酵法もしくは植物原料(八角)から供給されている。その生産量は天候等不確定要素の影響を受けやすいとされ、安定供給可能な石油原料からタミフル合成する方法の開発が強く望まれている。この背景にあって、2006年、ハーバード大・E.J.Corey[2]および東京大・柴崎正勝[3]の両名が相次いでタミフルの完全化学合成法を発表した。これらの報告を皮切りに、続々と改良合成法が報告され始めている。
近年、日本でタミフルを服用した幼児が飛び降りをするなど、中枢系への移行による副作用と疑わしき事態が散発している。因果関係を明らかにすべく、世界中の科学者たちがタミフルの中枢効果について、あらゆる側面から急ピッチで研究を進めている。
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関連文献
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関連書籍
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外部リンク
タミフルをどう作る?~インフルエンザ治療薬の合成~ (有機って面白いよね!)
Oseltamivir total synthesis – Wikipedia
Roche May Grant Tamiflu Licenses C&ENのニュース