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       (HP: http://www.chem-station.com/  )
  (2005,Vo.9)                                   総発行部数 4408 部
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  ===============================================================  
  ━━━Index━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ■化学トピック

   『最近の論文から〜ピロールの直接的カップリング〜』

  ■化学用語
 
   『マイクロリアクター』

  ■ホームページ更新情報
   Chem-Station URL: http://www.chem-station.com/
   (2/23〜3/1)
  
  ■最新化学ニュース

    ◎α‐リポ酸の脂肪蓄積抑制作用を高める効果を実証

  ◎三共、第一製薬が統合へ 売上高9000億円規模

  ■編集後記
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
    ■化学トピック

    『最近の論文から〜ピロールの直接的カップリング〜』

    生物活性を有する天然物にはピロールやインドール骨格を有しているもの
    が存在します。もちろんこのような構造を有する医薬品も数多く存在
    します。ピロールやインドール構造の医薬品を作るためにはこの構造をす
    ぐに導入できる、有機合成化学的手法の開発が望まれています。
 

   今回紹介するのは、ピロール、インドール類をカルボニル化合物へ直接カ
    ップリングする方法です1)2)。まずはインドール、ピロール構造を有する化
    合物をいつくか紹介します。

    ▼ インドール、ピロール構造を有する天然物と医薬品  

   インドール構造を有する化合物の例として、RNAポリメラーゼを阻害する
    Hapalindole Q、抗ガン活性を有するStephacidin Aなどがあります。
    また、ピロール構造を有する化合物には抗炎症薬である非ステロイド性
    のトルメチン、ケトロラックなど、すでに医薬品として用いられているもの
    をあげてみました。

   ここにあげたものはほんの一部ですが、それらに共通して官能基化され
    たインドール、ピロールを有しており、これらの合成法の開発は、他の類
    似構造を有する化合物を見出すためにも非常に興味深いものといえます。
  
    今回、紹介する論文において、スクリプス研究所のPhill Baranらはインド
     ール、ピロールに直接カルボニル化合物を導入する方法を報告し、それ
    を利用したHapalindole Q、Stephacidin A (S)-Ketorolacの大変効率的な
    全合成を報告しています。それでは、どのようにカップリング反応を行って
    いるのでしょうか?

    続きは こちら ↓↓
  http://www.chem-station.com/yukitopics/pyrrole.htm


  ▼参考、関連文献

  1) P.S. Baran, J. M. Richer and D. W. Jin Angew. Chem ., Int. Ed.  2005,
   44, 609 .

  2) C& EN 2005, 83, 31.

  ◎ Indole Alkaloids (Frontiers in Natural Product Research Series Vol. 2)
  http://z.la/t2cqe

  抗腫瘍活性を有するビンブラスチン、血圧降下剤reserpine、イ、毒性のある
  リゼルグ酸など、重要な生物活性を有するインドールアルカロイドの合成に
  ついて詳しく述べています。

  ◎Pyrroles
   http://z.la/bjypc
 
  ◎天然物の全合成―Total synthesis of natural products
   http://z.la/6el7w

   約50人の日本の研究者を選び、各人の自薦した天然物の全合成の構造図を
   収録。本文は構造図、化学式、英文で構成。

  ◎Classics in Total Synthesis II
   http://z.la/1k0kk

    前書のClassics in Total Synthesis : Targets, Strategies, Methods同様全合
   成の興味深い論文を詳しく、反応から合成法まで解説。Classicsと名前はつい
   ているが、最近合成された天然物ばかりで最新の全合成、合成戦略を体系的
   に学習できる。研究室のゼミの題材等にも最適であるため、ぜひもっておきた
   い1冊である。

 ◎Dead Ends And Detours
  http://z.la/y46vq
 
 ▼関連リンク

 [インドール indole]

 ・インドール  http://qrl.jp/?181394
 ・Fischerのインドール合成 http://qrl.jp/?179319
 ・福山インドール合成 http://qrl.jp/?167712
 ・三枝-伊藤のインドール合成 http://qrl.jp/?163852
 ・Nenitzescuのインドール合成 http://qrl.jp/?181693
 ・Bischlerのインドール合成 http://qrl.jp/?178515
 ・アルカロイドについて http://qrl.jp/?180974
 ・新規有機合成方法論の開発と有用化合物合成への展開(PDF)
  http://qrl.jp/?181233
 
 [ピロール pyrrole]

 ・ピロール  http://qrl.jp/?164665
 ・Piloty-Robinsonのピロール合成 http://qrl.jp/?170149
 ・ネーミングいろいろ(3) 〜宝石の名を持つ分子〜
  http://qrl.jp/?177875
 ・Hantzschのピロール合成 http://qrl.jp/?174046

 ・Baran Home page
   http://www.scripps.edu/chem/baran/html/home.html
 
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
  ■化学用語
 
  『マイクロリアクター』 マイクロリクター microreactor

  はじめはDNA分析等の微量分析に用いられる目的で研究されていましたが、
  1990年代中ごろから化学合成を目的としても使われるようになりました。マイ
  クロリアクターという用語は第一人者ののEhrfeldらにより名づけられました。
  昔はマイクロリアクターといっても数センチオーダーのものばかりでしたが、
  現在はμm単位の反応器が多数報告されています。利点は

  1)必要な物質を必要な量だけ必要に応じて生産できる為、環境への負担が少ない

  2)反応の制御が容易

  などがある。

  反応のスケールアップは、反応装置を大きくするのではなくマイクロリアクター
  を並列にする、ランタイムを上げることで達成できます。つまり、工業化の際の
  スケールアップによる検討が必要がなく基本的には実験室と同様の条件で反
  応が行えます。

  ▼関連サイト

  ◎マイクロリアクター技術の開発と応用
  http://qrl.jp/?181073

  マイクロリアクターはマイクロチャネルリアクターとも呼ばれ、数〜数百μmのマ
  イクロ流路を有する微小反応器の総称である。?加熱、冷却速度が速い、(2)
  流れが層流である、(3)単位体積当たりの表面積が大きい、(4)物質の拡散長が
  短いので反応が迅速に進行する等の特徴を有し、これらの特徴を利用した高
  速かつ高選択性の反応系の構築が可能であることから、将来の化学産業を支
  える重要な基盤技術の一つと位置づけられている 

  ◎マイクロリアクターの化学
  http://qrl.jp/?159622

  三相系(気相ー液相ー固相)反応であるパラジウム触媒による水素添加反応が
  マイクロチャネルリアクター中において効率的に進行することを見いだした。
 
  ◎「マイクロリアクター」装置化に成功
  http://chemstation.livedoor.biz/archives/8667575.html
 
  大日本スクリーン製造は28日、化学や製薬業界で開発製造期間の短縮を実現
  する次世代反応装置「マイクロリアクター」の装置化に成功した、と発表した。 
  少量の液体から高精度な物質を安定生成できる装置で、2006年後半をめどに
  事業化を目指す。 
  ケムステニュースより http://chemstation.livedoor.biz/
  

  ▼関連書籍

   ◎マイクロリアクター―新時代の合成技術
  http://qrl.jp/?179024
 
   化学産業に大きな変革をもたらす可能性があると期待されている「マイクロリアク
  ター」に関する国内外の研究・開発状況を概観する論文集。
  
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ■ホームページ更新情報
   Chem-Station URL: http://www.chem-station.com/
   (2/23〜3/1) 
 
    ▼2月27-28日 

      ・ケムステニュースに記事を追加。

      ・サイトのヘッダーを一新。検索バーを各種チャンネルに設置いたしました。

      ・CSSを変更。

      ・チャンネル『サイト検索』の新着サイトを7日から30日以内としました。

      ・「有機って面白いよね!!」にトピックを追加 

      ・「ODOOS」を更新。新着サイトを7日から60日以内としました。 

    ▼2月25-26日

      ・ケムステニュースに記事を追加。

      ・チャンネル『ニュース』を更新

      ・チャンネル『学習』を更新

    ▼2月23日

      ・メルマガ「化学って面白いよね!!」2005,Vo.7を発行いたしました。
      (配信部数4074部)

      ・「ODOOS」を更新
  
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
  ■最新化学ニュース

    ◎α‐リポ酸の脂肪蓄積抑制作用を高める効果を実証
  
    ロート製薬は21日、同社独自の研究開発でα‐リポ酸がアミノ酸との併用で、
    脂肪細胞への脂肪蓄積を格段に抑制することを実証したと発表した。既にα‐
    リポ酸単体での脂肪抑制効果は確認済みで、さらに今回の成果を応用し、代
    謝低下による肥満の改善や肌の健康維持に役立つ製品の早期開発を進め、
    商品化を目指す考え。

   実験では、脂肪細胞をインスリン添加培地で培養することで細胞中に脂肪を
    蓄積。そこにα‐リポ酸を添加すると脂肪の蓄積が抑制され、さらにアミノ酸
    (ロイシン)を組み合わせることで脂肪抑制効果が顕著に現れることを見出し
    た。
    (引用:薬事日報  http://www.yakuji.co.jp/  )

    テレビで話題のα-リポ酸(α-Lipoic acid)。ちっちゃいとよく見えませんが、
    英語表記の通りα-リボ酸ではなくリポ酸です。そんなものでやせたら世の
    中にデブはいないが、抗酸化力があるのは確かです。食べ物にも大豆とかレ
    バーにも含まれています。今回はロイシン(Leucine)を組み合わせることによ
     ってより効果があるというわけです。


    やせるかどうかは他のサイトで多く話題になっているのでもういいとして、一
    応化学のニュースサイトであるのと、一般的な話題に飽き飽きしている方もい
    るかもしれないので、他ではないαリボ酸の合成について少し書きます。
    (マニアックですみません。)

     α-リポ酸はどうやら天然(生物)からはあんまり取れないらしく(牛の肝臓1
    0トンから30mgとありました。)、今あるα-リボ酸は合成で供給されていると
    思います。見ての通り単一の光学活性体(R体)なので合成するには不斉合成
    もしくはラセミ体をつくって光学分割しなければなりません。おそらくカルボン酸
    なので酵素を用いて分割しているとは思いますが。適当にScifinderで検索した
    一番最近の不斉合成例を挙げてみます。

    ref. ) Tetrahedron Lett. 45, 6027 (2004)

   クライゼン転位とシャープレス不斉ジヒドロキシル化により光学活性ラクトン
   を合成し、3段階でジオールとした後、メシル化、デメシル化、エステルの加
   水分解によりα-リポ酸の不斉全合成を報告しています。うーんあまりうまくない。

   ・ロート製薬 http://www.rohto.co.jp/
   ・不斉合成 http://www.chem-station.com/yukitopics/asymmetric.htm
  ・ラセミ体 http://www.chem-station.com/yukitopics/topics6.htm
  ・光学分割 http://www.chem-station.com/study/yogo/resolution.htm

  ・クライゼン転位 http://www.chem-station.com/odoos/data/Claisen.htm
   ・シャープレス不斉ジヒドロキシル化 http://qrl.jp/?176402
 
   -----------------------------------------------------------------
    ◎三共、第一製薬が統合へ 売上高9000億円規模
 
   国内の製薬業界で2位の三共と、6位の第一製薬が、10月をめどに持ち株会
   社を設立し経営統合する方向で検討していることが19日、明らかになった。統
   合後の売上高は9000億円規模となり、業界首位の武田薬品工業に迫る。
 
  外資系製薬会社の攻勢や、薬価引き下げで競争が激しくなる中で、統合によっ
   て経営体力を強化するのが狙い。製薬業界では、4月に山之内製薬と藤沢薬品
   工業が合併して発足するアステラス製薬が、いったん2位となるが、三共と第一
   製薬が統合すれば再び業界2位に返り咲く。製薬業界はこれら3強の時代に入
   るが、再編がさらに進む可能性もある。
   (引用:産経新聞 http://www.sankei.co.jp/ )

   昨年のアステラスに続いて、大型合併です。昨年は大日本製薬と住友製薬の合
   併発表もありました。銀行もUFJと東京三菱の統合と再編が続いていますが、
   製薬業界も、ものすごい勢いの合併再編です。本当にわからなくなりました。

   三共は主力が高脂血症治療薬、メバロチン。特許が切れていますので今後の大
   型新薬開発に期待です。

   一方、第一製薬の主力は抗菌剤であるクラビット。研究開発力も開発費も単純に
   考えると倍増しますがどうなるのでしょうか?

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ■編集後記
 
    プロ野球のオープン戦が始まりましたね。早いものです。昨年のプロ野球は
  いろいろあったこともあって逆に今年は注目しています。
  しかし、この注目も序盤のゲームの面白さで、離れていく人もいると思います。
  プロですから試合も、その他も面白い内容を望んでます。

  ユニクロが今年大型店舗を多数展開するようです。すごいですね。
  銀座にもできるようです。いやー何処にそんな金があるんだろ。昔はユニクロ
  着てるとかなり馬鹿にされたものですが。そんな私もトランクスと靴下はユニ
  クロです。安いですよね。(笑) 

  今週は、著名な若手の研究者がやってきて、一緒に昼飯を食います。
  英語のできなさを露呈し、がんばる駆動力となることを期待します(苦笑)。

  それではまた次号!
  
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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   http://www.chem-station.com/merumaga.htm
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  ■ 配信System まぐまぐ  http://www.mag2.com/  (ID = 36452)
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ■ご意見&ご感想
   こんなコーナーを作ってほしい!、化学トピックスで〜に関する話題をとりあ
  げてほしい!、ここがおかしい!、ここがおもしろい!等々のご意見&ご感想は
  メール cnet@cmail.plala.or.jp へお願いいたします。
  お便りお待ちしています。
  ┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛
  マガジン名:化学って面白いよね!! 2005,Vo.9 (2005.3.2)
  発行者: Chem-Station 
  情報サイト:http://www.chem-station.com/

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Sample HTML版

 

2005,Vo.9

 

 総発行部数 4408 部


 

 

『最近の論文から〜ピロールの直接的カップリング〜』
 

生物活性を有する天然物にはピロールやインドール骨格を有しているものがあります(図1)。

もちろんこのような構造を有する医薬品も数多く存在します。ピロールやインドール構造の医薬品を作るためにはこの構造をすぐに導入できる、有機合成化学的手法の開発が望まれています。

 

図1 ピロールとインドール

 

 今回紹介するのは、ピロール、インドール類をカルボニル化合物へ直接カップリングする方法です1)2)。まずはインドール、ピロール構造を有する化合物をいつくか紹介します。

 

インドール、ピロール構造を有する天然物と医薬品

  

 インドール構造を有する化合物の例として、RNAポリメラーゼを阻害するHapalindole Q、抗ガン活性を有するStephacidin Aなどがあります(図2)。また、ピロール構造を有する化合物には抗炎症薬である非ステロイド性のトルメチン、ケトロラックなど、すでに医薬品として用いられているものをあげてみました(図3)。

 

図2 インドール構造を有する化合物

 

 

 

図3 ピロール構造を有する化合物

 

 ここにあげたものはほんの一部ですが、それらに共通して官能基化されたインドール、ピロールを有しており、これらの合成法の開発は、他の類似構造を有する化合物を見出すためにも非常に興味深いものといえます。今回、紹介する論文において、スクリプス研究所のPhill Baranらはインドール、ピロールに直接カルボニル化合物を導入する方法を報告し、それを利用したHapalindole Q、Stephacidin A (S)-Ketorolacの大変効率的な全合成を報告しています。それでは、どのようにカップリング反応を行っているのでしょうか?

 

直接的カップリング反応

 

 

図4 間接的な反応と直接的な反応 

 

  まず、直接的なカップリング反応を説明するため簡単なマンガを作ってみました(図4)。例えば芳香環を導入する反応、すなわち、酸化的な炭素炭素結合反応を行うには対応するカップリングパートナーを官能基化することが必要です。鈴木カップリングではハロゲン化アリールと有機ホウ素化合物、Stilleカップリングではハロゲン化有機スズ化合物、芳香環に直接カルボニル化合物を導入するFriedel-Craftアシル化反応もカップリング相手は酸クロリドとしています。これらにはハロゲン化水素の発生や生成物でない残渣が問題となります。もちろんこれらのカップリングパートナーを合成するためにさらに数段階の合成も必要です。つまり間接的な合成となります。それらがなければ直接的な合成です。余談となりますが最近、話題のプロリンを触媒としたアルドール反応やマンニッヒ反応等も、通常金属触媒では用意しなければならない対応するエノラートやイミンを調製する必要がないため、直接的な反応といえます。

 

インドール、ピロールの直接的カップリング反応

 

  カルボニル化合物に塩基として、LHMDSを作用させ、エノラートとした後に、酸化剤として2価の銅を加えることによってインドール、ピロールとのカップリング反応を成功させています(図4)。

 

 

図4 カルボニル化合物へのインドール、ピロールのカップリング反応

 

 反応機構は以下のように提唱されています3)。銅を加えると以下のような中間体を経て、還元的脱離、異性化反応の後生成物が得られます(図5)。 

 

図5 反応機構

 

 筆者らはこの反応を天然物の合成に応用しています。

 

Hapalindole Qの不斉全合成

 

  RNAポリメラーゼを阻害するHapalindole Qは、インドールとカルボンを先ほど説明した直接的カップリング反応でカップリングさせ、1段階でほぼ全ての炭素骨格を導入しています。その後4段階の官能基変換により全合成を達成しました4)(図6)。 この、天然物は1993年にAlbizati5)らによっても全合成が達成されており、同様なカップリングが行われていますが、その際はインドールの窒素原子を保護して、ブロモ化して、カップリングパートナーも有機スズ試薬としたStilleカップリング反応によって中間体を得ています。さらに、A. Kerr6)らも合成していますが、その収率は12段階で1.7%。今回の合成はなんと5段階で22%と非常に効率的です。

 

 

図6 Hapalindole Qの全合成

 

 

(S)-Ketorolacの全合成

 

抗炎症薬である非ステロイド性のケトロラックの合成においては、銅の代わりに鉄を用いて不斉分子内カップリング反応を行い、続いてベンゾイル化することによって達成しています1)。(図7)

 

図7 Ketorolacの全合成

 

    このように、直接的な合成法を行うことで、非常に単段階、かつ良好な総収率で目的の化合物を合成することができます。しかし、これだけ有用な合成法でもこれらの合成がすぐに実際の医薬品の合成に取って代わることは難しいと考えられます。ただ、有用な化合物の誘導体の合成、リード化合物の合成としては迅速に作れるため用いられるのではないでしょうか。

 さらに、Stephacidin A7)にも応用しエレガントな合成を達成しているので、興味がある方は 読んでみてください。

 

ところで、余談ですがP.S. Baran氏は2005年にA.C.Cope賞を受賞した天然物合成の権威であるK.C.Nicolauの研究室出身で、IBX酸化やCP-molecule等のチームリーダーとして有名です。実はまだ確か20代で若手の合成化学者では5本の指に入るやり手です。 今後も彼の仕事に注目したいと思います。

 (2005.2.9 ブレビコミン)

 

参考、関連文献

 

1) P.S. Baran, J. M. Richer and D. W. Jin Angew. Chem ., Int. Ed.  2005, 44, 609 .
 

2) C& EN 2005, 83, 31.

 

3)  この反応機構は、筆者らが

 1) ピロールの二量化は進行しない

 2) Nを保護したピロールとは反応が進行しない。

 3) 当量の銅が必要で、銅を1.5当量に変更してもあまり収率は変化しない

 4) 反応終了後、1価の銅塩に特徴的な赤褐色の塩が析出する

ということから、このように提唱しています。

 

4) P. S. Baran, J. M. Richter, J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 7450.
5) V. Vaillancourt, K. F. Albizati, J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 3499 (ca. 4% yield).
6) A. C. Kinsman, M. A. Kerr, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 14120 (ca. 1.0% yield).

7) P. S. Baran, C. A. Guerrero, N. B. Ambhaikar, and B. D. Hafensteiner, Angew. Chem ., Int. Ed . 2005, 44, 606 .

Indole Alkaloids (Frontiers in Natural Product Research Series Vol. 2)Indole Alkaloids (Frontiers in Natural Product Research Series Vol. 2)

 

 抗腫瘍活性を有するビンブラスチン、血圧降下剤reserpine、イ、毒性のあるリゼルグ酸など、重要な生物活性を有するインドールアルカロイドの合成について詳しく述べています。

 

 

Pyrroles

 

天然物の全合成―Total synthesis of natural products

約50人の日本の研究者を選び、各人の自薦した天然物の全合成の構造図を収録。本文は構造図、化学式、英文で構成。

 

 

 

Classics in Total Synthesis IIClassics in Total Synthesis II

前書のClassics in Total Synthesis : Targets, Strategies, Methods同様全合成の興味深い論文を詳しく、反応から合成法まで解説。Classicsと名前はついているが、最近合成された天然物ばかりで最新の全合成、合成戦略を体系的に学習できる。研究室のゼミの題材等にも最適であるため、ぜひもっておきたい1冊である。

 

Dead Ends And DetoursDead Ends And Detours

 

 

 


 

関連リンク

 

[インドール indole]

インドール

Fischerのインドール合成

福山インドール合成

三枝-伊藤のインドール合成

Nenitzescuのインドール合成

Bischlerのインドール合成

アルカロイドについて

新規有機合成方法論の開発と有用化合物合成への展開(PDF)

 

[ピロール pyrrole]

ピロール

Piloty-Robinsonのピロール合成

ネーミングいろいろ(3) 〜宝石の名を持つ分子〜

Hantzschのピロール合成

 

Baran Home page

 

 
 

『マイクロリアクター』 マイクロリクター microreactor

 

 はじめはDNA分析等の微量分析に用いられる目的で研究されていましたが、1990年代中ごろから化学合成を目的としても使われるようになりました。マイクロリアクターという用語は第一人者ののEhrfeldらにより名づけられ ました。昔はマイクロリアクターといっても数センチオーダーのものばかりでしたが、現在はμm単位の反応器が多数報告されています。利点は

1)必要な物質を必要な量だけ必要に応じて生産できる為、環境への負担が少ない

2)反応の制御が容易

などがある。

 反応のスケールアップは、反応装置を大きくするのではなくマイクロリアクターを並列にする、ランタイムを上げることで達成できます。つまり、工業化の際のスケールアップによる検討が必要がなく基本的には実験室と同様の条件で反応が行えます。

出典:http://www.mikroglas.com/

 

 関連サイト

 

 マイクロリアクター技術の開発と応用

 マイクロリアクターはマイクロチャネルリアクターとも呼ばれ、数〜数百µmのマイクロ流路を有する微小反応器の総称である。⑴加熱、冷却速度が速い、(2)流れが層流である、(3)単位体積当たりの表面積が大きい、(4)物質の拡散長が短いので反応が迅速に進行する等の特徴を有し、これらの特徴を利用した高速かつ高選択性の反応系の構築が可能であることから、将来の化学産業を支える重要な基盤技術の一つと位置づけられている

 

 マイクロリアクターの化学

 三相系(気相ー液相ー固相)反応であるパラジウム触媒による水素添加反応がマイクロチャネルリアクター中において効率的に進行することを見いだした。
 

 「マイクロリアクター」装置化に成功

 大日本スクリーン製造は28日、化学や製薬業界で開発製造期間の短縮を実現する次世代反応装置「マイクロリアクター」の装置化に成功した、と発表した。少量の液体から高精度な物質を安定生成できる装置で、2006年後半をめどに事業化を目指す。  ケムステニュースより

 

 

 関連書籍

 

  マイクロリアクター―新時代の合成技術

  化学産業に大きな変革をもたらす可能性があると期待されている「マイクロリアクター」に関する国内外の研究・開発状況を概観する論文集。

 


 

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