金属元素としては最も多く地殻中に存在するアルミニウム。一円玉やアルミ缶の原料として日常的に使われる金属となりました。しかし、昔はたいへん貴重な金属だったのです。
アルミニウムの基本物性データ
分類 | 金属 |
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原子番号・原子量 | 13 (26.981538) |
電子配置 | 3s23p1 |
密度 | 2700kg/m3 |
融点 | 660.32℃ |
沸点 | 2467℃ |
硬度 | 2.75 |
色・形状 | 銀白色・固体 |
存在度 | 地球8万4100ppm、宇宙 8.49 x 104 |
クラーク数 | 7.56%(3位) |
発見者 | ハンフリー・デービー(1807年)、ハンス・クリスティアン・エルステッド(1825年) |
主な同位体 | 27Al (100%), 28Al(β, 2.2414分) |
用途例 | 一円玉、アルミ缶、アルミホイル、ジュラルミン |
前後の元素 | マグネシウムーアルミニウムーケイ素 |
誰がアルミニウムの発見者?
アルミニウムの発見経緯は複雑です。
はじめに1782年、ラボアジェがミョウバン石に未知の金属が含まれていることを発表し、それをアルミーヌ(Alumine)と命名しました。実際、1807年にデービーがミョウバン石からアルミナ(Al2O3)を電気分解する実験により単離し、これを単体元素と考えアルミアム(Alumium)と名付けました。しかし、デービーはまだ純粋なアルミニウムを取り出すことができていなかったのです。
1825年にデンマークの物理科学者エルステッド(Hans Christian Orsted)が塩化アルミニウムから、カリウムを還元剤としてほぼ純粋なアルミニウムをはじめて単離しました。さらに、1827年にヴェーラーがその製法を改良し、純粋なアルミニウムを得ています。そのため、単体のアルミニウムとしてはエルステッドが発見者となります。
フリードリヒ・ヴェーラー(Friedrich Wöhler)
1800-1822年。ドイツの化学者。1827年にさらに純度が高い塩化アルミニウムをつくり、エルステッドと同様の手法で純粋なアルミニウムを得た。1828年無機化合物から初めて有機化合物の尿素を合成し、生命しか作れないというそれまでの有機化合物の定義を覆した。これが有機化学のはじまりとされる。
この還元法によりアルミニウムを単離できたわけですが、当時は非常に貴重な金属であったといわれています。現在工業的には、ボーキサイトを水酸化ナトリウムで処理し、アルミナを取り出した後、溶融し電気分解を行う方法が一般的です(ホール・エルー法)。
一円玉は1円より高い?
日本の貨幣である一円玉はアルミニウムでできています。現在の1円硬貨は昭和29年に発行され、2015年で60周年を迎え、造幣局によりそれを記念したプルーフ貨幣セットが発売されました。年々需要は減っているものの、2014年には消費税が8%となったことから、1億6千枚の1円玉が発行されました。今年(2016年)は約5000枚が発行予定。電子マネーの普及から再び使用頻度が低くなったためです。
実は、現在工業生産に使われるホール・エルー法は多くの電力を消費するため、なんと一円玉1枚の製造コストは1円よりも高いと言われています。現在(2015年時点)の製造コストは1枚辺り約3円。2019年には消費税が10%となり、1円玉の活躍の場が益々減る可能性があります。貨幣の価値よりも高い硬貨「1円玉」はいつまで作り続けられるでしょうか。
スーツケースに使われるジュラルミン合金
アルミニウムは比重が小さく、銅や鉄の3分の1の軽さで、錆びにくい金属です。純粋なアルミニウムは軟らかいため、金属材料としての使用は制限されますが、さまざまな金属と合金となることで強度を高めることが可能です。アルミニウムの合金として有名なジュラルミンは、航空機の材料や各種車両、スーツケースとして、広く使われています。
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