[スポンサーリンク]

ケムステニュース

【速報】新元素4つの名称が発表:日本発113番元素は「ニホニウム」!

[スポンサーリンク]

かねてより全世界が待ち望んでいた新元素の命名。特に今回は日本発・113番元素が檜舞台に上がるということで、国内でもかつてない注目を集めていました。

実は今回は113番のみならず、115番・117番・118番も加えた計4つの新元素名が発表される手はずになっていました。このことはご存じでしたか?

ある意味平常運転なのかも知れませんが、日本の成果のみを偏向的に取りあげるマスコミの報道姿勢は何とかして欲しいところ・・・また、フライング気味に命名”案”が英語記事でまで大きく報道されていましたが、これって本当に大丈夫なのかな?embargoみたいなのって無いのかな?などと思いながら眺めてたのですが・・・まぁ、ちゃんと採用されたから結果オーライ?

ともあれ、今回発表された元素名ですが、IUPAC公式ページによると、

113番:ニホニウム(Nihonium, Nh)
115番:モスコビウム(Moscovium, Mc)
117番:テネシン(Tennessine, Ts)
118番:オガネソン(Oganesson, Og)

という命名になったようです。

 

名前の由来

各元素名は一体何に由来しているのでしょうか?こちらもIUPAC公式ページに書いてありますので、かいつまんでご紹介します。

新元素の命名指針は、概ね以下の5つとされています。今回の事例もそれに沿っています。

(a) 神話的概念・物体・天体 (a mythological concept or character)
(b) 鉱物もしくは類する物質 (a mineral or similar substance)
(c) 場所・地理的領域(a place, or geographical region)
(d) 元素の特性 (a property of the element)
(e) 科学者(a scientist)

 

堂々日本で発見!ーニホニウム

name_4_new_element_3

 

113番元素については既に多数報道があるとおり、「日本で見つけられた」ことを分かりやすくする狙いからだと思います。JapanではなくNihonとしたところにこだわりがありますね。略称は「Nh」ですが、Niだとニッケルと被ってしまいますので、こうなるのでしょう。

 

115番と117番も地名ーモスコヴィウムとテネシン

2016-06-09_00-12-20

name_4_new_element_4

 

同様に地名由来なのは、115番元素と117番元素。前者はすぐ分かりますがロシアの首都・モスクワから、後者は米国のテネシー州から来ています。モスクワに本拠地を置くドゥブナ合同原子核研究所、米国テネシー州にあるオークリッジ国立研究所が今回の元素発見の立役者です。前者は105番元素ドゥブニウム(Db)としても名を残す、新元素発見のメッカです。

外国人視点からの「地名のチカラ」は、これらの例だけ見てもよく分かるのではないでしょうか。

 

人名からとりましたーオガネソン

name_4_new_element_5

118番元素は、ロシアの核物理学者Yuri Oganessianに由来しています。既に114番元素フレロヴィウム(Fl)として名を残すゲオルギー・フレロフが設立した、フレロフ原子核反応研究所のリーダーです。超重元素絡みで数々の業績を挙げており、周期表における一つのマイルストーンたる118番元素に名付けられる資格は十二分に有する方といえます。ロシア強し!!

ちなみに、存命のうちに元素名に採用された科学者は、Glenn Seaborg(→シーボーギウム Sg)に次いで二人目なのだとか。

元素には「~イウム(-ium)」といった接尾語が大抵付けられるものですが、ご覧の通り、117番と118番は少し違っています。これは周期表の「族」を眺めて見るとわかります。117番はハロゲン元素と同族、118番は希ガス元素と同族に位置しています。今回の命名規則もこれに倣ったものと考えられます。

 

name_4_new_element_6

117番と118番は名前の付け方が少し違う

 

まだまだ最終決定ではない(でもほぼ決定)!

今後5ヶ月間は公から意見を貰う「パブリックレビュー期間」とされ、大きな問題が無いようであれば最終決定となります。

速報ということで、まずはこれぐらいにしておきます。

歴史の金字塔に刻まれることがほぼ決定した日本発元素・ニホニウム。まずは関係者の方々に祝辞を贈りたく思います。おめでとうございます!!

そして元素ブーム到来成るか!?今後とも目が離せません!!

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4422420046″ locale=”JP” title=”世界で一番美しい元素図鑑”][amazonjs asin=”4816359311″ locale=”JP” title=”元素のすべてがわかる図鑑”][amazonjs asin=”4054058388″ locale=”JP” title=”美しい元素 (学研の図鑑)”]

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. インフルエンザ治療薬「CS‐8958」、09年度中にも国内申請へ…
  2. ソウル大教授Nature Materials論文捏造か?
  3. 硫黄化合物で新めっき 岩手大工学部
  4. 希少金属
  5. 2014年化学10大ニュース
  6. 酸素ボンベ爆発、男性死亡 
  7. アルツハイマー病患者の脳内から0価の鉄と銅が発見される
  8. 米FDA、塩野義の高脂血症薬で副作用警告

注目情報

ピックアップ記事

  1. 企業の研究開発のつらさ
  2. 化学Webギャラリー@Flickr 【Part2】
  3. 反応機構を書いてみよう!~電子の矢印講座・その1~
  4. ケムステイブニングミキサー2017ー報告
  5. デヴィッド・シュピーゲル David A. Spiegel
  6. グリチルリチン酸 (glycyrrhizic acid)
  7. ホフマン転位 Hofmann Rearrangement
  8. ネオ元素周期表
  9. (–)-Daphenezomine AとBの全合成
  10. 尿酸 Uric Acid 〜痛風リスクと抗酸化作用のジレンマ〜

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年6月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

モータータンパク質に匹敵する性能の人工分子モーターをつくる

第640回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所・総合研究大学院大学(飯野グループ)原島崇徳さん…

マーフィー試薬 Marfey reagent

概要Marfey試薬(1-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル-5-L-アラニンアミド、略称:FD…

UC Berkeley と Baker Hughes が提携して脱炭素材料研究所を設立

ポイント 今回新たに設立される研究所 Baker Hughes Institute for…

メトキシ基で転位をコントロール!Niduterpenoid Bの全合成

ナザロフ環化に続く二度の環拡大というカスケード反応により、多環式複雑天然物niduterpenoid…

金属酸化物ナノ粒子触媒の「水の酸化反応に対する駆動力」の実験的観測

第639回のスポットライトリサーチは、東京科学大学理学院化学系(前田研究室)の岡崎 めぐみ 助教にお…

【無料ウェビナー】粒子分散の最前線~評価法から処理技術まで徹底解説~(三洋貿易株式会社)

1.ウェビナー概要2025年2月26日から28日までの3日間にわたり開催される三…

第18回日本化学連合シンポジウム「社会実装を実現する化学人材創出における新たな視点」

日本化学連合ではシンポジウムを毎年2回開催しています。そのうち2025年3月4日開催のシンポジウムで…

理研の一般公開に参加してみた

bergです。去る2024年11月16日(土)、横浜市鶴見区にある、理化学研究所横浜キャンパスの一般…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー