[スポンサーリンク]

ケムステニュース

大分の高校生が特許を取得!

[スポンサーリンク]

 

力強い若き化学者の卵たちの活躍に関するニュースがまた飛び込んできました。

今度は大分県の高校生の研究成果が特許という形で実を結んだというニュースです。

 

大分上野丘高校(大分市)の化学部は、高分子膜「コロジオン膜」を作る高分子間の隙間(孔径)を変えたり、孔径の中に物質を閉じ込めたりする制御技術を開発し、特許を取得した。

県教委によると、高校生が部活動で特許を取得するのは珍しいという。

同部は2009年度から、物質を選択して透過させられる性質を持つコロジオン膜をテーマに研究を続けている。

特許を取得したのは、11年度の研究の成果。水分子を詰め込むことで孔径を広げる▽不揮発性で孔径よりも小さいサリチル酸で孔径を埋め、孔径を小さくする▽さらに、湿度によって赤や青に変化する塩化コバルトを孔径に閉じ込める――といった技術の開発に成功した。

現在の部員は20人。このうち、11年度の研究に携わった2、3年13人で申請し、昨年11月末に、取得した。同部の特許取得は初めて。

研究では、塩化コバルトを閉じ込めるための、サリチル酸の適切な分量を見つける実験を繰り返すなどした。

発電物質を閉じ込めた膜を窓に張り付けるといった応用も考えられるという。部長の2年久留米由唯さん(17)は「色々苦労したが、取り組みが公的に認められてうれしい。さらに研究を進め、もう一度、特許を取りたい」と意気込んでいる。

特許を取得した研究は、昨年開かれた第36回全国高校総合文化祭で最優秀賞を受賞している。

 

読売ONLINEより引用

先日は小学生が危険物甲種の免状を取得したというニュースをお伝えしましたが、今度は大分県立大分上野丘高校の化学部の学生さんたちの研究成果が特許として認められたというニュースです。

 

セルロースのヒドロキシ基が硝酸エステル化されている硝酸セルロースを有機溶媒に溶解したものはピロキシリンと呼ばれます。これはよく水絆創膏として利用されています。ピロキシリンを用いて薄膜を作成し、溶媒を気化させるとコロジオン膜と呼ばれれるセロファン状のものができます。これは言うなればろ紙のような役割を果たすことができ、ある種の物質を透過することができます。しかし、コロジオン膜を形成するニトロセルロースの網目の大きさはまちまちなので、選択的に望みの物質だけをろ過することは難しいとされていました。

 

tokkyo_1.png

 

全国高校総合文化祭自然科学部門発表論文集より引用

 

記事の繰り返しになりますが要約するとコロジオン膜を形成する際に、

①水をたくさん添加することで穴を広げる

②サリチル酸を添加することで穴を小さくする

③塩化コバルトを穴に閉じ込めることによって膜の乾燥—吸湿状態を一目でわかるようにする

という3つの手法を開発しました。この手法により様々な穴の大きさをもった分離濾過膜を作ることができるようになったとのことです。

 

この研究成果は2年生の久留米由唯さん、尾中達郎さん他10名の連名で昨年八月に行われた第36回全国高校総合文化祭の自然科学部門:化学ですでに発表しており、彼らは最優秀賞を受賞しております。おめでとうございます!

特許についてはまだ公開されていないようですが(特願2012-64402)、電子ブックにて総合文化祭の発表内容を閲覧することができます。

今後彼らが化学分野で益々活躍してくれることを期待しています!

おまけですが部長の久留米さん、尾中くんの勇姿と思われる動画を拾ってきました。動画の時間は短いですがプレゼンもうまくさすが最優秀賞ですね!

 

 

 

  • 関連書籍

[amazonjs asin=”4750328073″ locale=”JP” title=”大分学”][amazonjs asin=”4404042019″ locale=”JP” title=”大分県謎解き散歩 (新人物往来社文庫)”][amazonjs asin=”4882934388″ locale=”JP” title=”大分から世界へ: 大分トリニータ・ユースの挑戦”][amazonjs asin=”440403461X” locale=”JP” title=”大分県の不思議事典”]
Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. 東レ科学技術賞:東京大学大学院理学系研究科奈良坂教授受賞
  2. 世界初の「窒化タンタル光触媒」、可視光で水分解
  3. 岡大教授が米国化学会賞受賞
  4. 2009年10大化学ニュース【Part2】
  5. 周期表を超えて~超原子の合成~
  6. MIT、空気中から低濃度の二酸化炭素を除去できる新手法を開発
  7. 人名反応から学ぶ有機合成戦略
  8. 独バイエル、世界全体で6100人を削減へ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第20回「転んだ方がベストと思える人生を」ー藤田 誠教授
  2. クノール キノリン合成 Knorr Quinoline Synthesis
  3. Reaction Plus:生成物と反応物から反応経路がわかる
  4. ワークアップの悪夢 反応後の後処理で困った場合の解決策
  5. 水が決め手!構造が変わる超分子ケージ
  6. オルトメタル化 Directed Ortho Metalation
  7. 医薬品のプロセス化学
  8. カルベンがアシストする芳香環の開環反応
  9. カスケードDA反応による(+)-Pedrolideの全合成ダダダダ!
  10. 【ケムステSlackに訊いてみた③】化学で美しいと思うことを教えて!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年2月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728  

注目情報

最新記事

ブテンを原料に天然物のコードを紡ぐ ―新触媒が拓く医薬リード分子の迅速プログラム合成―

第 687回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 有機合成化学教室 (金井…

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP