Dr.遷移金属触媒ーー
金属と配位子の結合性に由来する協奏機能を有する遷移金属錯体(協奏機能触媒)に注目し、それらが高性能分子触媒として不斉還元や不斉炭素- 炭素結合および炭素- 窒素結合形成反応を効率よく促進することを見いだしました。
最近では、協奏機能分子触媒によるアルコール類の空気酸化を課題とし、Ru、Ir触媒を用いて、温和な中性条件下アルコールの空気酸化が進行することを見出しています。
【略歴】1976年東京工業大学博士課程修了(
山本明夫教授)。東京大学助手、NKK中央研究所研究員を経て(その間1979年から2年間カリフォルニア工科大学博士研究員(
Grubbs教授))、1991年ERATO分子触媒プロジェクト(
野依良治教授)チームリーダーとなる。その後1997年東京工業大学教授となり、現在に至る。
Dr.光機能材料ーー
アゾベンゼンを規則正しく配列させて組み込んだ、光応答性ポリマーを開発しました。光を当てることでマクロスコピックな構造変化を引き起こす事が可能です。
(画像:池田・宍戸研究室HPより)
【略歴】1973年京都大学高分子化学科卒業。1978年同大学院博士課程を修了し、英国リバプール大学博士研究員となる。その後、東京工業大学資源化学研究所助手、助教授を経て1994年より現職。
・池田・宍戸研究室
Dr.固体表面化学ーーー
界面、表面化学は近年興隆しているナノテクノロジーを理解するために非常に重要な分野です。受賞タイトル通り、これまで固液界面におけるナノ構造のその場決定と機能性物質相の構築を行ってきました。
最近では、多核錯体を固体表面に固定し、メタノール酸化や二酸化炭素還元反応など多核錯体の特性を生かした電極触媒への応用も試みています。
【略歴】1969年大阪大学工学部応用化学科卒業、同大学院に進み修士課程を修了した後、三菱油化に就職。3年後、南カリフォルニア大学へ留学、1976年同博士課程修了。 1978年よりオックスフォード大学無機化学研究所研究員となる。1980年帰国し、北海道大学講師、助教授を経て、1990年同大教授となり現在に至る。
- 大須賀篤弘 氏(京大院理) 「構造的・電子的に新規なポルフィリノイドの開発と展開」
Dr.ポルフィリンーー
光合成系や生体内にもよく見られるポルフィリンを骨格とした「ポルフィノイド」の開発を行いました。例えば、ポルフィリンの環を拡大した環拡張ポルフィリンや独自に開発した銀塩酸化法によってメゾ位で直接ポルフィリン同士が結合した「メゾ-メゾ結合ポルフィリン多量体」などシンプルな発想ながら誰も達成していなかったポルフィノイドを合成し、その特徴的な”機能”を生かし、様々な反応や材料として応用しています。
(画像:大須賀研HPより)
最近では環拡張ポルフィリンであるヘキサフィリン、オクタフィリンの金属錯体が 4nπ電子共役系とねじれた環状構造によりメビウス芳香族性を持つことを見出してます。
【略歴】1977年京都大学理学部卒業、同修士課程、博士課程に進み、1979年に同大学院を中退し愛媛大学助手となる。1984年京都大学助手となり、1987年助教授、1996年教授となり現在に至る。
Dr.ナノカーボンーー
一貫してナノカーボンケミストリーに従事し、フラーレンに金属を挿入した金属内包フラーレンの合成と単離に初めて成功しました。さらに、フラーレンを内包したカーボンナノチューブであるナノピーポット(ナノさやえんどう)を創成しました。これらの見た目にも興味深い材料を使って、多くの応用研究を行っています。
金属内包フラーレン
ナノピーポット
【略歴】1977年信州大学理学部化学科卒業。京都大学大学院に進学し、博士課程中退した後、1979年岡崎分子科学研究所助手となる。1988年三重大学工学部分子素材工学科助教授となった後、1993年より名古屋大学理学研究科教授となり現在に至る。
Dr.ゴールドーー
昔から金は化学的に不活性であるとされてきましたが、直径10 nm以下のナノ粒子として 卑金属酸化物や活性炭に担持することで、特に低温で白金やパラジウムより優れた触媒活性を発現することを明らかとしました。現在の金触媒研究に多大な貢献を与えています。
【略歴】1970年名古屋工業大学卒業。1976年京都大学大学院博士課程を修了した後、大阪工業技術研究所研究員となる。1994年首席研究官、1999年部長となる。2005年より首都大学東京教授となり現在に至る。
春田研究室
以上、日本化学会学会賞の紹介でした。
日本化学会春季年会(近畿大学)にて受賞講演がありますので是非是非皆様足を運んでみてはどうでしょうか。ちなみにツイッターではハッシュタグ
#CSJ90で今年の年会についての情報交換が行われています。