[スポンサーリンク]

ケムステニュース

米国ACSジャーナル・冊子体廃止へ

[スポンサーリンク]

acspubslogo.gif

 

 米国化学会(ACS)ジャーナル出版部のsenior vice president、Susan King氏がNature 編集者へ宛てた内部メモによると、ACSは、冊子体のジャーナルを廃止し、オンライン版のみに移行する模様だ。
研究者の好みにより冊子体購読数が激減し、経費(印刷費、流通費)>収益という収益構造となったのが主因。
7月には、旗艦3誌(Journal of the American Chemical Society、Accounts of Chemical Research、Chemical
Reviews)以外のジャーナルは縮刷版(1ページに2ページ分印刷)にしてコスト削減し、2010年には全ての冊子体を廃止する予定 (なお、7月6日付Ars Technicaには、2010年よりオンライン化されるのは上記3誌以外とある)。
内部メモが漏れた形となったが、King氏は、口を噤んでいる。(引用:情報管理WEB)

 

アメリカ化学会(ACS)出版部がジャーナルを全て電子化する計画にある、というニュースが飛び込んできました。

これは今後の大きな潮流を示唆するニュースといえるのではないでしょうか。すなわち、主たる科学技術情報は、今後数年でほとんど全てが電子媒体経由になってしまう、ということの兆しなのだと思えます。

 

紙媒体は保管・管理・印刷・製造・送付など、諸々のコストが掛かるために、インターネットが発達した現在では、その発行メリットが薄れてきているのも事実です。

筆者も最近は、紙媒体のジャーナルを全く読まなくなってしまいました。ラボで購読してないというのも理由の一つですが、大抵はインターネットで検索して探してしまう方が、圧倒的に速いし、かさばらなくて便利なのです。

その一方で、紙媒体のジャーナルを読むメリットというのも確かにあります。目次やGraphic Abstractなどをぱらぱらとめくると、予期せず面白そうな研究に出くわしたり、知人の名前が載ってる論文を見つける事が出来たり・・・インターネット経由よりは、何かと余分な情報を手に入れやすいように感じます。そういう意味では、研究プロセスから完全に無くしてしまうのも、ちょっと勿体ないように思えます。

Nature誌とのやりとりがリークしたとのことですが、Nature Publishing Group(NPG)側も、同じようなことを考えているだろうことは、おそらく間違いないように思えます。

この流れにあって、他の出版社はどう動くことになるのでしょうか。NPGやACSのような巨大団体が紙媒体発行を辞めるとなれば、それに倣って、それなりのインパクトファクターをもつジャーナルでも、軒並み紙媒体の出版を辞めてしまいそうに思えます。

そうなってくると、ITスキルに弱い研究者は、情報収集・選別・整理などの面で後手後手にならざるを得なくなるのでしょう。今後は英語だけでなく、ITリテラシーも、研究者としては必須の素養になってくるのだと思われます。

話は変わりますが、ジャーナルの購読料ってなんであんなに高いんでしょう。たとえば筆者がいる研究機関ではNature Chemistryを購読してません。わりと読んでみたい論文、抑えておかないと自分のテーマに支障が出そうな論文もあるようなのに、ダウンロードできない悲しい現実。かといって自分で購読しようとすると、一報(一冊ではない!)につき$32とかいうありえない金額が提示されてくる・・・。そんな額など、いちポスドクに毎度毎度払えるわけがありませんよ・・・。どなたかこのカラクリを教えてくださいまし。

 

関連リンク

化学研究ライフハック:RSSリーダーで新着論文をチェック! (有機って面白いよね!!)

 

関連書籍

[amazonjs asin=”B009M2QROA” locale=”JP” title=”かんたん!『積ん読』ゼロの蔵書電子化マニュアル (impress QuickBooks)”]
Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 三菱ケミの今期経常益‐1.8%に、石化製品市況弱く
  2. エストロゲン、閉経を境に正反対の作用
  3. イグノーベル賞2020が発表 ただし化学賞は無し!
  4. 歯のバイオフィルム除去と病原体検出を狙ったマイクロロボットの開発…
  5. マイクロ波加熱を用いた省エネ・CO2削減精製技術によりベリリウム…
  6. 富山化学 新規メカニズムの抗インフルエンザ薬を承認申請
  7. 産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜
  8. トムソン・ロイターのIP & Science事業売却へ…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ノーベル化学賞メダルと科学者の仕事
  2. 難溶性多糖の成形性を改善!新たな多糖材料の開発に期待!
  3. 第40回「分子エレクトロニクスの新たなプラットフォームを目指して」Paul Low教授
  4. カルボカチオンの華麗なリレー:ブラシラン類の新たな生合成経路
  5. 「糖鎖レセプターに着目したインフルエンザウイルスの進化の解明」ースクリプス研究所Paulson研より
  6. 「自然冷媒」に爆発・炎上の恐れ
  7. マテリアルズ・インフォマティクス新春座談会 -二刀流で進める素材開発 実験と計算科学-
  8. クレアチン creatine 
  9. 【22卒就活スタートイベント】Chemical Live(ケミカルライブ)10/31(土)・11/1(日) YouTubeライブ配信!
  10. 持続可能社会をつくるバイオプラスチック

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー