[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

クラーク・スティル W. Clark Still

[スポンサーリンク]

W・クラーク・スティル(W. Clark Still、1946年8月31日(ジョージア州オーガスタ生)-)は、アメリカの有機化学者である。元コロンビア大学教授。(写真引用:Columbia University Record)

経歴

1969 エモリー大学 卒業
1972 プリンストン大学 博士号取得
1975 ヴァンダービルト大学 助教授
1977 コロンビア大学 准教授
1980 コロンビア大学 教授
1993 Pharmaco Poeias, Inc 取締役

受賞歴

1981 アランT.ウォーターマン賞
1993 アメリカ化学会計算化学賞
1982 ブックマン賞
1984 スティーグリッツ賞
1987 ACS Arthur C. Cope Scholar賞

研究概要

有機合成化学の進歩をもたらした画期的業績を複数あげている。歴史的に傑出した代表的な成果を以下に記す。

難関天然物の全合成研究

ペリプラノンB、モネンシンなどの全合成を達成。

人名反応の開発

彼の名を冠する化学反応には、Still-Gennariオレフィン合成法Wittg-Still転位などが知られている。

トロンボキサンA2の化学合成

thromboxaneA2.gif

トロンボキサンA2は生理条件下にて容易に加水分解を受け半減期32秒にて不活性なトロンボキサンB2に変化してしまう。Stillらは、アセタール隣接位に臭素原子を導入してオキソニウムカチオン体の安定性を減じた合成中間体を設計した。この臭素原子をポリマー担持型スズヒドリドによって除去したのち、トロンボキサンA2のアルカリ金属塩を合成する事に成功し、当時推定でしかなかったトロンボキサンA2の構造を強く支持する結果を得た。これは不安定化学種の機器分析による同定が困難であった際、有機合成がその力量を発揮した好例と言える。

thromboxaneA2_2.gif

フラッシュカラムクロマトグラフィー法の開発

現在では当たり前のように使われる、陽圧下に展開溶媒を流しクロマトグラフィの速度を速めるフラッシュカラムクロマトグラフィ法を開発した。

配座探索プログラムMacroModelの開発

モンテカルロ法を応用して有機化合物の配座探索を行うプログラムを開発。現在では各種計算化学ソフトウェアパッケージに実装される標準ソフトウェアとなっている。

コンビナトリアル化学の開拓

組み合わせを利用しての多種類の化合物群(ライブラリー)を効率的に合成し、それらを様々な目的に応じて活用していく技術のことをコンビナトリアルケミストリー(combinatorial chemistry)といいます。理論的には組み合わせの分だけ一度に多量の化合物を生み出すことができるため、創薬化学、つまり製薬会社等で生物活性の高い化合物を簡単に見出すために使われました。その考えを初めて提唱したのがStill教授です。

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ロルフ・ヒュスゲン Rolf Huisgen
  2. Noah Z. Burns ノア・バーンズ
  3. 盧 煜明 Dennis Yuk-ming Lo
  4. 中村 修二 Shuji Nakamura
  5. 水島 公一 Koichi Mizushima
  6. トム・メイヤー Thomas J. Meyer
  7. ジョン・アンソニー・ポープル Sir John Anthony …
  8. エチオ・リザード Ezio Rizzardo

注目情報

ピックアップ記事

  1. 製薬業界の現状
  2. 長井長義の日記など寄贈 明治の薬学者、徳島大へ
  3. 【ケムステSlackに訊いて見た④】化学系学生の意外な就職先?
  4. 有機反応を俯瞰する ーエノラートの発生と反応
  5. 中外製薬が工場を集約へ 宇都宮など2カ所に
  6. アルキンから環状ポリマーをつくる
  7. チャート式実験器具選択ガイド:実験メガネ・白衣編
  8. エンインメタセシス Enyne Metathesis
  9. モウンジ・バウェンディ Moungi G Bawendi
  10. アゾ化合物シストランス光異性化

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2008年10月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP