小林 修(こばやし しゅう、1959年6月13日生まれ)は、日本の有機化学者である。東京大学大学院理学系研究科 教授。水を溶媒とした有機合成の研究で知られ、水中で安定なルイス酸の開発や不斉合成反応など、多数の成果を上げている(写真:ERATO)。
経歴
- 1983年: 東京大学理学部化学科 卒業
- 1985年: 東京大学大学院理学系研究科 修士課程修了
- 1987年: 東京大学大学院理学研究科 博士課程中退
- 1987年: 東京理科大学理学部応用化学科 助手
- 1991年: 東京理科大学理学部応用化学科 講師
- 1992年: 東京理科大学理学部応用化学科 助教授
- 1998年: 東京大学大学院薬学系研究科 教授
- 2007年: 東京大学大学院理学系研究科 教授
<兼任>
- 1995~1999年:科学技術振興事業団・戦略的基礎研究推進事業「単一分子・原子レベルの反応制御」研究代表者
- 2000~2002年:科学技術振興事業団・基礎的研究発展推進事業「ナノスケールの触媒および反応場を活用する 環境調和型プロセスの開発」研究代表者
- 2003~2008年:ERATO「小林高機能性反応場」プロジェクト研究代表者
- 2008年~:経済産業省「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発 プロジェクト」テーマリーダー(2009年度よりNEDO)
受賞歴
- 1991年: 日本化学会進歩賞
- 1997年: Springer Award in Organometallic Chemistry
- 2000年:Novartis化学賞
- 2001年: 日本IBM科学賞
- 2002年: 名古屋シルバーメダル
- 2005年: 三井化学触媒科学賞
- 2005年: 日本学術振興会賞
- 2006年: Arthur C. Cope Scholar Award
- 2006年: C.S.Hamilton Award
- 2006年: Howard Memorial Lecturer賞
- 2013年:Humboldt Research Award
- 2013年:第12回グリーン・サステイナブルケミストリー賞 文部科学大臣賞
- 2016年: 東レ科学技術賞
- 2019年:日本化学会賞
- 2020年: 紫綬褒章
研究概要
水を溶媒とした有機合成[1-5]
水中で安定に機能するルイス酸として、希土類金属トリフラート(ランタノイドトリフラート)を初めて見いだし、「水中で安定なルイス酸」を体系化した。
新規高分子固定化触媒の開発
マイクロカプセル化法やカルセランド型化合物形成による、高分子化合物への触媒担持を行い、有機合成用触媒の改良に努めている。
触媒的不斉合成の開発[6-8]
イミンの触媒的な活性化に成功し、初めての触媒的不斉Mannich反応、Aza Diels-Alder反応などを開発するなど、多くの独創的かつ革新的な研究成果を挙げている。
固定化触媒を用いた医薬品のフロー合成[8-10]
2015年には、不均一触媒型カラムだけを用いた連続フロー不斉合成法によって、医薬有効成分ロリプラムの不斉合成を報告している[11](関連記事:フロー法で医薬品を精密合成)。
コメント&その他
- 原著論文数830以上、引用回数は61,740回(2024年9月6日現在)、H指数は130(2024年9月6日現在)と、我が国を代表する化学研究者の一人である。
関連文献
- Kobayashi, S.; Hachiya, I. Lanthanide Triflates as Water-Tolerant Lewis Acids. J. Org. Chem. 1994, 59, 3590 DOI:10.1021/jo00092a017
- Kobayashi, S.; Nagayama, S.; Busujima, T. Lewis Acid Catalysis in Aqueous Media. Chem. Lett. 1997, 26, 959-960. DOI: 10.1246/cl.1997.959
- Kobayashi, S.; Ogawa, C. New Entries to Water-Compatible Lewis Acids. Chem. Eur. J. 2006, 12, 5954-5960. DOI:10.1002/chem.200600385
- Kobayashi, S.; Sugiura, M.; Kitagawa, H.; Lam, W. W.-L. Rare-Earth Metal Triflates in Organic Synthesis. Chem. Rev. 2002, 102, 2227–2302. DOI:10.1021/cr010289i
- Kobayashi, S.; Manabe, K. Development of Novel Lewis Acid Catalysts for Selective Organic Reactions. Acc. Chem. Res. 2002, 35, 209–217. DOI:10.1021/ar000145a
- Kobayashi, S.; Mori, Y.; Fossey, J. S.; Salter, M. M. Catalytic Enantioselective Formation of C–C Bonds by Addition to Imines and Hydrazones: A Ten-Year Update. Chem. Rev. 2011, 111, 2626–2704. DOI:10.1021/cr100204f
- Yamathita, Y.; Yasukawa, T.; Yoo, W.-J.; Kitanosono, T.; Kobayashi, S. Chem. Soc. Rev. 2018, 47, 4388-4480. doi:10.1039/C7CS00824D
- Ishitani, H.; Saito, Y.; Kobayashi, S. Enantioselective Organometallic Catalysis in Flow. Top. Organomet. Chem. 2016, 57, 213–218. [link]
- Kobayashi, S. Flow “Fine” Synthesis: High Yielding and Selective Organic Synthesis by Flow Methods. Chem. Asian J. 2016, 11, 425–426. DOI:10.1002/asia.201500916
- Tsubogo, T.; Oyamada, H.;Kobayashi, S. Nature 2015, 520, 329–332. DOI:10.1038/nature14343