イライアス・ジェームス・コーリー(Elias James Corey, 1928年7月12日-)はアメリカの有機化学者である(写真:Wikipedia)。米国ハーバード大学教授。
1990年に、「有機合成理論および方法論の開発」により、ノーベル化学賞を受賞。特に天然物合成を始めとする複雑化合物合成経路を設計するための指針、逆合成解析を用いる手法を考案した。もうじき90歳を迎える今でも精力的に研究を行っている。
経歴
1928年7月12日にマサチューセッツ州のメシュエン(Methuen)で生まれた。
16歳でLawrence Public High Schoolを卒業後、1945年にマサチューセッツ工科大学(MIT)に入学(当時Arthur C. Cope、John C. Sheehan、 John D. Roberts、 Charles Gardner Swainという有名な教授陣が在籍)。
3年でMITを卒業後、Sheehan教授の下で、ペニシリンの合成に従事し、数年の後、助教授を経て、1956年に若干27歳でイリノイ大学の教授となり、不斉合成、新規有機合成反応の開発、酵素化学等を研究した。
1959年にハーバード大学化学科の教授として招聘される(当時の教授陣はPaul D. Bartlett, Konrad Bloch, Louis F. Fieser, George B. Kistiakowski, E. G. Rochow, Frank H. Westheimer, E. B. Wilson, R. B. Woodward)。その後、数々の新規有機合成反応、多くの複雑天然物の全合成を達成し、それら基礎研究を基盤とした逆合成解析(retrosynthesis)という概念を提唱することで、複雑有機化合物合成における設計指針を確立せしめた。1990年にノーベル化学賞を受賞。
1951 マサチューセッツ工科大学博士号取得
1951 イリノイ大学(Illinois at Urbana-Champaign)研究員(Roger Adams, Carl S. Marvel.)
1956 イリノイ大学教授
1959 ハーバード大学 教授
現在 ハーバード大学 名誉教授
受賞歴
1973 Linus Pauling Award
1978 Franklin Medal
1983 Tetrahedron Prize
1986 Wolf Prize in Chemistry
1988 アメリカ国家科学賞
1989 日本国際賞(Japan Prize)
1990 ノーベル化学賞
1993 Roger Adams Award
2004 プリーストリーメダル
研究
1990年「有機合成の理論および方法論の開発」でノーベル化学賞を受賞。現在でも有用性の高い人名反応を多数開発(コーリー・ギルマン・ガネム酸化 Corey-Gilman-Ganem Oxidation・コーリー・チャイコフスキー反応 Corey-Chaykovsky Reaction・コーリー・ウィンターオレフィン合成 Corey-Winter Olefin Synthesis・コーリー・キム酸化 Corey-Kim Oxidation・コーリー・フックス アルキン合成 Corey-Fuchs Alkyne Synthesis・コーリー・バクシ・柴田還元 Corey-Bakshi-Shibata (CBS) Reduction・コーリー・ニコラウ マクロラクトン化 Corey-Nicolaou Macrolactonizaionなど。
これらの反応を用いてプロスタグランジン、エクチナサイジン743など、多くの複雑天然物の全合成研究を行った。
最近では、東大薬学部の柴崎正勝教授と同時にインフルエンザ治療薬であるタミフルの合成を報告し、話題になる[1]。
コメント &その他
- 150人以上の大学教授、多数の製薬会社の研究員など、世界中に数多くの弟子を輩出しています。米国の有機合成化学領域では、ほとんどの化学者がCorey派閥かEvans派閥に属しています。Corey系譜β版
- 80歳を超えた現在でも精力的に研究を続けており、すごいとしかいいようがありません。
- 研究を見る目は非常に厳しく、研究室内で同一テーマを争わせることもあります。
- 2004年に彼の功績により、「Corey Award」という賞が設けられた。精力的かつ魅力的な研究を行っている合成化学の若手ライジングスターに与えられています。
- 論文を報告する際の構造式には特徴がある。結合は極太、元素はすべてBold体。論文誌を読めば、すぐに彼の仕事だと理解できる。
- 息子はUT サウスウェスタンのDavid Corey。E. J. Corey からの手紙
関連論文
- Yeung, Y.-Y.; Hong, S.; Corey, E. J. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 6310. DOI:10.1021/ja0616433
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