[スポンサーリンク]

chemglossary

ノーベル化学賞 Nobel Prize in Chemistry

[スポンサーリンク]

ノーベル化学賞(Nobel Prize in Chemistry)は、ノーベル賞6部門のうちの1つ。 「化学の分野内で最も重要な発見あるいは改良を成し遂げた」人に与えられます。

言わずと知れた化学界における世界最高の賞です。誰もが貰いたがる賞なので、それに関連してもろもろの人間くさい逸話も沢山知られるところとなっています(詳しくは下記の関連書籍をご覧ください)。受賞者一覧はこちら

ひとたび獲得すると世界中に名前が知れ渡ることになり、対応がまずは大変らしいです。一サラリーマン研究者から、一夜にして世界的有名人となってしまった田中耕一フェローが受賞パニックに巻き込まれて悩みに悩んだのも記憶に新しいところです(ただ、このケースは報道姿勢自体が、それほど褒められたものではないと思いますが)。それほどの破格の名声を利用して、研究ではなく政治活動に利用する人も少なくありません。・・・といっても無闇やたらにそうしたがるのは、「受賞研究者」自身ではなく「その周囲の人たち」であるケースが多いようにも見えますが・・・。

日本社会では、邦人受賞者が出ない限り、ニュースとしてそれほど高く扱われないように見えます。その一方で、欧米では他国研究者が受賞しても各種メディアがきっちりと報道し、特集を組んで称えるような文化を持つようです。このことは、日本国民がいかにノーベル賞慣れしていないか、科学者を低く見がちか、表面的なことにとらわれがちか、プラスよりもマイナスを大々的に報道する傾向にあるか、を端的に表してはいないでしょうか。ノーベル賞を称えることが一種のお祭りでお終いになってしまいがちというのは、まだまだ民の文化的成熟度が低い証拠だとも思えます。科学技術の恩恵にあずからず生きていけない我々なのですから、「ブレイクスルーを果たした人に敬意を払う良い機会」と捉えるぐらいでも構わないのでは、と思います。

受賞者は毎年3人までと決められています。このため受賞確実と言われながらもあと一歩で貰えなかった化学者も少なからず出てきます。2007年化学賞(表面化学)では、ガボール・ソモライ教授(プリーストリーメダルは受賞)は有望と言われつつも貰えませんでしたし、2002年化学賞(不斉触媒化学)では、理論面の第一人者であるアンリ・カガン教授(DIOP配位子を開発し、不斉触媒における非線形現象モデルの提唱などでも貢献)も選から漏れました。

選定基準は完全機密かつブラックボックスになっています。その姿勢は賞の権威・信頼性を高めている効果を果たす一方で、結果に疑問符を投げかける標的にもされます。つまり、「なぜこの化学者がもらえないのか?説明しなさい!」と組織ぐるみで選定委員会へ批判を浴びせる自体が勃発するlことも少なくないようです。しかし委員会は、数多の批判に対し毎度ノーコメントで通しています(当然と言えば当然ですが)。

ある風説によれば、受賞者選定のための調査には賞金額と同程度の金額を費やしているそうです。真実のほどはどうあれ、これだけの影響力をもつ賞ですから、それだけのコストをかけて選定しているのもなんら不思議ではないと思えます。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4832974122″ locale=”JP” title=”鈴木章ノーベル化学賞への道”][amazonjs asin=”4022599553″ locale=”JP” title=”クラゲの光に魅せられて ノーベル化学賞の原点 (朝日選書)”][amazonjs asin=”4877781498″ locale=”JP” title=”日本はなぜノーベル化学賞につよいのか!?―田中耕一さんに学ぶ勉強法・思考法、日本の化学・科学の過去未来”][amazonjs asin=”4797342005″ locale=”JP” title=”現代科学の大発明・大発見50 なぜその発明・発見はノーベル賞につながったのか? (サイエンス・アイ新書)”][amazonjs asin=”4800218039″ locale=”JP” title=”ノーベル賞と日本人 (別冊宝島 2083)”][amazonjs asin=”4315518948″ locale=”JP” title=”ノーベル賞110年の全記録―日本の受賞科学者全15人を完全紹介 (ニュートンムック Newton別冊)”]

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 熱活性化遅延蛍光 Thermally Activated Del…
  2. カール・フィッシャー滴定~滴定による含水率測定~
  3. 血液―脳関門透過抗体 BBB-penetrating Antib…
  4. エレクトロクロミズム Electrochromism
  5. ラマン分光の基礎知識
  6. ケージド化合物 caged compound
  7. 色素増感型太陽電池 / Dye-sensitized Solar…
  8. 全合成 total synthesis

注目情報

ピックアップ記事

  1. 国際化学オリンピック2016でもメダルラッシュ!
  2. 第九回 タンパク質に新たな付加価値を-Tom Muir教授
  3. アルドール・スイッチ Aldol-Switch
  4. ダイハツなど、福島第一原発廃炉に向けハニカム型水素安全触媒を開発 自動車用を応用
  5. 第30回光学活性化合物シンポジウムに参加してみた
  6. 進化する電子顕微鏡(TEM)
  7. 有機合成化学協会誌2024年5月号:「分子設計・編集・合成科学のイノベーション」特集号
  8. 夢・化学-21 化学への招待
  9. 高純度化学研究所が実物周期標本を発売開始
  10. 幾何学の定理を活用したものづくり

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年2月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728  

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー