[スポンサーリンク]

chemglossary

ランタノイド Lanthanoid

[スポンサーリンク]

ランタノイド(lanthanoid)とは、元素周期表上で、ランタン(No.57, La)~ルテチウム(No.71, Lu)までの15種類をまとめた総称です。

希土類研究者の間では微妙な用語の使い分けがしばしば取りざたされます。ランタニドは「ランタノイドからLaを除いたグループ」、希土類元素は「ランタノイドにScとYを加えたグループ」という定義で用いられるのが一般的です。

ランタノイド金属は第5周期までとは異なり、原子番号が増えるにつれ4f軌道に電子が充填されていきます。しかし、4f軌道は化学的性質にあまり関与しないため、15種類の元素は性質がきわめて似てきます。そのため各ランタノイド元素を分離することは一般にとても難しいとされています。現在では溶解度の微妙な差を利用し、溶媒抽出操作で分離します。溶媒混合比率をひたすら検討し、最適な分離条件を探す研究も細々とではありますが行われているようです。

ランタノイド元素は原子番号が大きくなるにつれ、その原子半径が小さくなっていきます。化学的関与しにくい4f軌道に電子が詰まっていくため、殻電子の遮蔽効果よりも原子核による正電荷引力の影響のほうが、相対的に強くなっていくためです。これは一般的な元素とは逆の傾向にあり、特にランタノイド収縮(lanthanoid contraction)と呼ばれます。

原子半径が大きく通常6~8配位と大きな配位数をとるため、錯体化学的にも興味深い研究対象です。あまりの構造的フレキシビリティの高さゆえ、X線グレードの結晶をとってくるのはかなり難しいらしいですが。

有機合成化学においては、酸素親和性の高さを利用したルイス酸触媒として用いられることが多いです。3価以外の価数を容易にとるCeは酸化剤、Smは還元剤としても利用されます。

蛍光を発するランタノイド錯体も知られており、近年ではこれをバイオプローブとして利用しようとする試みも盛んです。

関連動画

関連書籍

[amazonjs asin=”551265943X” locale=”JP” title=”Lanthanide”][amazonjs asin=”B00F77KJ9S” locale=”JP” title=”Lanthanide Luminescence: Photophysical, Analytical and Biological Aspects: 7 (Springer Series on Fluorescence)”][amazonjs asin=”B00JKDDXUM” locale=”JP” title=”Highly Luminescent Lanthanide Complexes with Specific Coordination Structures (Springer Theses)”][amazonjs asin=”4621079379″ locale=”JP” title=”希土類とアクチノイドの化学”][amazonjs asin=”4254146485″ locale=”JP” title=”希土類元素の化学 (朝倉化学大系)”][amazonjs asin=”4762218987″ locale=”JP” title=”ランタノイドを利用する有機合成 (季刊化学総説 (No.37))”]

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 【金はなぜ金色なの?】 相対論効果 Relativistic E…
  2. 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR; reverse tr…
  3. 卓上NMR
  4. 塩素 Chlorine 漂白・殺菌剤や塩ビの成分
  5. カスケード反応 Cascade Reaction
  6. 深共晶溶媒 Deep Eutectic Solvent
  7. ネオ元素周期表
  8. 一重項分裂 singlet fission

注目情報

ピックアップ記事

  1. たるんだ肌を若返らせる薄膜
  2. 第37回 糖・タンパク質の化学から生物学まで―Ben Davis教授
  3. カルボン酸β位のC–Hをベターに臭素化できる配位子さん!
  4. GoodNotesに化学構造が書きやすいノートが新登場!その使用感はいかに?
  5. 出光・昭和シェル、統合を発表
  6. 最新プリント配線板技術ロードマップセミナー開催発表!
  7. マイクロ波を用いた革新的製造プロセスとヘルスケア領域への事業展開 (凍結乾燥/乾燥、ペプチド/核酸合成、晶析、その他有機合成など)
  8. ポンコツ博士の海外奮闘録④ ~博士,ろ過マトる~
  9. 分子の対称性が高いってどういうこと ?【化学者だって数学するっつーの!: 対称操作】
  10. 世界の技術進歩を支える四国化成の「独創力」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

4種のエステルが密集したテルペノイド:ユーフォルビアロイドAの世界初の全合成

第637回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院薬学系研究科・天然物合成化学教室(井上将行教授主…

そこのB2N3、不対電子いらない?

ヘテロ原子のみから成る環(完全ヘテロ原子環)のπ非局在型ラジカル種の合成が達成された。ジボラトリアゾ…

経済産業省ってどんなところ? ~製造産業局・素材産業課・革新素材室における研究開発専門職について~

我が国の化学産業を維持・発展させていくためには、様々なルール作りや投資配分を行政レベルから考え、実施…

第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」を開催します!

こんにちは、Spectol21です! 年末ですが、来年2025年二発目のケムステVシンポ、その名…

ケムステV年末ライブ2024を開催します!

2024年も残り一週間を切りました! 年末といえば、そう、ケムステV年末ライブ2024!! …

世界初の金属反応剤の単離!高いE選択性を示すWeinrebアミド型Horner–Wadsworth–Emmons反応の開発

第636回のスポットライトリサーチは、東京理科大学 理学部第一部(椎名研究室)の村田貴嗣 助教と博士…

2024 CAS Future Leaders Program 参加者インタビュー ~世界中の同世代の化学者たちとかけがえのない繋がりを作りたいと思いませんか?~

CAS Future Leaders プログラムとは、アメリカ化学会 (the American C…

第50回Vシンポ「生物活性分子をデザインする潜在空間分子設計」を開催します!

第50回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!2020年コロナウイルスパンデミッ…

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP