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化学者のためのエレクトロニクス入門③ ~半導体業界で活躍する化学メーカー編~

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bergです。化学者のためのエレクトロニクス入門のシリーズも3回目を迎えました。前回は電子回路を大きく半導体素子とプリント基板に分けて、その製造プロセスの流れをご紹介しました。今回は各工程に使われるファインケミカル(電子材料)を上流から順に、代表的なメーカーとともにみていきましょう。

①シリコンインゴット/ウエハ

wafer

シリコンウエハ(画像:flickr)

概要

ウエハはイレブンナイン(9が11回続く純度;99.999999999%)もの高純度シリコンを薄い円盤状に加工したものです。高純度シリコンの製造にはまず低沸点のSiCl4へ誘導して蒸留したのち単体ケイ素に戻してゾーンメルティング法による精製を行います。不純物には液相中ではシリコンと混和するものの、固相中では分離する性質(偏析)を示す成分が多く、局所的に加熱して融解すると不純物がその液相に集まります。加熱範囲を徐々に移動することで不純物は一端に集められ、残りのシリコンは純粋になります。こうして得られた高純度シリコンの円柱(インゴット)を薄くスライスしてウエハが完成します。

供給元

主なメーカーには信越化学工業とSUMCO(日)があり、この二社で世界シェアの大半を占めるとされます。

最近のトピック

微細化でかさんだコストを、ウエハの大口径化による固定費低減で吸収するため、ウエハ直径は大型化の一途をたどってきました。しかし、ここ数年は、現在主流の300 mmから進展が鈍り、次世代技術とされる450 mmの時代が本当に到来するのかは不透明な情勢です。

また、シリコン半導体の製造技術は既に成熟している側面もあり、GaNやSiCなどの化合物半導体が脚光を浴びています。

②フォトレジスト

Photoresist

フォトレジスト(画像:Wikipedia)

概要

フォトレジストは紫外線や電子線の照射によって溶解性が変化するポリマー材料で、溶解性が増すポジ型と、減るネガ型の二種類に大別されます。最近ではポジ型が主流となっています。

供給元

JSR(旧:日本合成ゴム)、東京応化工業、信越化学工業、住友化学、富士フイルムの5社が世界シェアの大半を握っているとされます。

最近のトピック

フォトレジスト材料の発展の歴史や成分の詳細については、また別途記事を執筆する予定ですが、一般に露光する紫外線の波長が短いほど、フォトマスクの細かいパターンまで正確に転写できるようになります。十分な信頼性を確保しつつ転写できるパターンのサイズの下限を、解像度といいます。近年では紫外線の中で最も短波長・高エネルギーの極端紫外線(EUV)が利用されるようになっており、波長13.5 nm、解像度10 nm以下での加工精度が要求されています。

③フォトマスク

SONY DSC

フォトマスク(画像:Wikipedia)

概要

フォトレジストを感光させる際の原本となるフォトマスクは、ガラスや石英、透明な高分子フィルムをパターンに合わせて不透明化して製造します。不透明化にもフォトレジストが用いられ、表面に塗布してレーザーや電子線ビームなどを照射してパターンを作成します。フォトレジストの解像度に応じた微細な構造が必要となることから、製造には高度な技術力が必要です。

供給元

主なメーカーはHOYA、大日本印刷、凸版印刷、エスケーエレクトロニクス、日本ファルコンなどで、印刷関連の企業が目立つのも特徴です。

最近のトピック

世代を経るにつれて大型化する傾向にあるようです。また、微細加工の需要が高まるにつれてより複雑なパターンを形成する必要に迫られた結果、単一の電子銃から多数の電子線ビームを射出できるフォトマスク製造装置が使用されるようになってきています。

④金属めっき薬品

plating

モバイル端末に欠かせないめっき(画像:Flickr)

概要

半導体内部の微細な銅配線や、外部に伸びる端子となる金リードフレームなどの製造プロセスに使われるのがめっき技術です。一般に、蒸着などの物理的な手法と比べて安価で簡便にムラのない加工が実現できるため普及しています。なお、後述するプリント基板の製造にもめっき技術が使われています。

なお、銅や金は常温においても非常に拡散しやすい金属です。そのため、銅の表面に直接金めっきを施すと長時間経過後に表面の金めっきが原子レベルで内側へと拡散し、めっき自体が消滅してしまいます。そこで、拡散しにくい金属(バリアメタル)の薄膜を中間に形成する手法が広く用いられています。拡散を起こしにくい金属としてはNiやPdが一般に利用されています。

供給元

めっきの種類ごとに棲み分けができています。

日本高純度化学:リードフレーム、コネクタ用貴金属めっきなど世界トップ。特にスマホ向けはほぼ独占

上村工業:無電解ニッケルで世界トップ

日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース(EEJA):半導体向けAuめっき液グローバルトップシェア

小島薬品化学:高純度が要求される貴金属めっき液

JCU:銅ビアフィルでトップクラス、装飾用も

石原ケミカル:はんだめっき、ウエハバンプ用めっき

 

最近のトピック

貴金属は地殻中の存在量自体が少ないことから、数千円/g以上と極めて高価です。また、鉱床の多くが特定の国家・地域(独裁国家や政情不安定・係争中の地域)に偏在しており、政治的なリスクなどから安定供給に不安があるものも少なくありません。そのため、その使用量の低減(省金化)の努力が払われています。

また、半導体内部の配線にはここ四半世紀銅が用いられてきましたが、近年では微細化による性能面(エレクトロマイグレーション:高電流密度による配線の破損、など)での限界に直面しています。そのため、次世代の微細配線材料としてはCoやRuが一躍脚光を浴びています。

⑤封止材

chip

封止材にパッケージされた半導体チップ(画像:pixabay)

概要

半導体チップのパッケージとなる材料です。絶縁性と耐候性に優れたポリマー素材(エンジニアリングプラスチック:エンプラ)が用いられます。

供給元

住友ベークライト、日本化薬、日立化成(2020年10月に昭和電工マテリアルズに改名されます)、パナソニック、京セラなど

最近のトピック

特に大電力を扱うパワーデバイスにおいて、素子の高集積化によるサイズあたりの発熱量増加のため、高温での連用に耐えうる絶縁材料の探索が進められています。

 

代表的な素材を列挙しましたが、このほかにもエッチング用の産業ガスやウエハ洗浄液、イオン注入に用いられる産業ガス、スパッタターゲットなど、数多くの化学品が揃ってはじめて半導体素子を製造することが可能になります。その点で、非常に裾野の広い産業であるといえます。

また、現時点での日本勢のシェアの大きさとともに、CMなどでなじみの薄い企業も活躍していることが改めて実感できたのではないかと思います。これらファインケミカルメーカーは総じて利益率も高く、今後さらなる発展の期待できる分野でもあります。

フォトレジストや金属めっきをはじめ、このあたりの分野は非常に奥が深く、一回の投稿では十分に記すことができませんので、別途シリーズを作るかもしれません。

本当はプリント基板やその他の素子までご紹介したかったのですが、随分と長くなりましたので区切ります。次回に続きますのでお楽しみに。

関連リンク

グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題(令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課)

2019年9月11日付 日経新聞朝刊全国版 スマートフォン特集

関連書籍

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berg

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化学メーカー勤務。学生時代は有機をかじってました⌬
電気化学、表面処理、エレクトロニクスなど、勉強しながら執筆していく予定です

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