以前ケムステでも紹介した文献管理ソフトReadCube。インターフェースと視認性が良く、操作に迷うことがありません。初心者にもとっつきやすいソフトです。・・・とはいえ、実は紹介して以来、しばらくほったらかしておりました。
しかしその普及の勢いは留まることを知らず。最近ではジャーナルとタイアップしてブイブイ言わせておるご様子。
やっぱり良いソフトなのかなと思って再度触れてみました。すると数々の機能がどストライク!いやー想像以上に便利ですわこれ。早速ReadCube Proへアップグレードし、使い方を徹底模索しているところです。
日本語解説記事がまだまだ多くないソフトですので、学んだことを読者の皆さんと共有できれば価値があるだろうと考えました。
というわけで、本シリーズでは「ReadCubeを便利に活用するテクニック」を、以前よりも一段突っ込んで特集していきたいと思います。
第一回目のテーマは「ReadCubeで論文閲覧プロセスを全て完結させる」です。
電子論文を読むには、いろんなサービスの組み合わせが必要・・・ってホント?
皆さんは欲しい論文を読みたいとき、どのようにゲットしていますか?
まずブラウザを開きますね。そしてRSSリーダー、PubMed、SciFinder、Web of Knowledgeなどを使って所望の論文を探すはずです。その後、複数回のリンククリックを経てジャーナルページに赴き、PDFをダウンロードします。
無事PDFが得られたら、論文を整理・管理します。やり方は十人十色でしょうが、EvernoteやMendeleyをお使いの方も多いでしょう。インポートすら面倒がって、全文検索機能に頼ってハードディスクに放置、という筆者のごときものぐさ人間もいらっしゃるかもしれません(笑)。
何にせよ、図書館に出向いて毎度コピーを取っていた一昔前に比べ、急激に便利になりました。ただ、いろんなサービスを横断的に使わねばならないので、やっぱり少し連携が面倒です。
実はこの問題、ReadCubeだけでかなりの部分が解決されます。ただしそのためにはアタマを少し切り替える必要があります。
そもそもブラウザを窓口とせず、ReadCubeからいきなり論文を読んでしまうスタイルにすればいいのです!
ReadCubeだけで全てを片付ける!
毎回のプロセスを紹介しましょう。
①ReadCube上で読みたい論文を探しだします。
まず左上の「Search」をクリックし、検索窓を開きます。ReadCube上ではGoogle ScholarとPubMedの検索窓がそのまま活用できます。
筆者はGoogle Scholarの方をメインに使っています。最近は精度が上がって強力になっているので、キーワードがいい加減でも絞り込んでこれます。DOI番号でも検索できますし、何より高速です。こういったところは、融通の利かない他サービスよりも優れているところだと思います。
一例として「sp3 C-H activation 2016」で検索した結果を示します。ブラウザ上でGoogle Scholar使えばそれでいいんじゃない?と思う方は多いかも知れません。しかし実は、ブラウザ経由より便利な点がいくつもあります。
まず、キーワードに属性が簡単に付けられます。ReadCube上では、各キーワード毎にプルダウンメニューでAuthor、年号、タイトルなどを指定できます。Google ScholarやPubMedでも別窓を使えばできますが、ReadCubeのほうがより直観的にできます。
検索履歴もちゃんと残ります。検索の二度手間・三度手間が防げるのは地味に良いです。
検索結果のリストも簡潔なので、Google Scholarより見やすい気がします。
そして次に示すとおり、ダウンロードにかかる手数が少なく簡単なのが最大のメリットです。
②ReadCube上で論文をダウンロードします。
欲しい論文がみつかったら、リストをクリックします。すると、情報が右ウィンドウにポップアップ表示されます。
ダウンロードボタンをワンクリックするだけで論文ダウンロードが始まります。ソフトがproxy情報を勝手に解析してくれるため、面倒な設定は不要です。研究機関で購読契約があれば、そのままダウンロードできます。毎回ジャーナルページに飛ぶ必要はありません。
ダウンロードされたらアイコンが「READ」に変わります。
リストの左にブリーフケースのアイコンが表示されますので、既にダウンロードしたかどうかも一目瞭然です。チェックしてないリストは緑の●で表示されます。Pro版であれば論文PDFはクラウドに保存されるので、一度ダウンロードしてしまえば別デバイスからも読むことが可能です。
③ReadCube上で論文を読みます。
ダウンロード後の「READ」ボタンをクリックすると、ReadCube上で論文が開きます。
以前開いた論文は記憶されており、左ウィンドウから再度アクセス出来ます。タブブラウザと同様の仕組みですね。
テキストをドラッグ選択すると、ハイライト・ノート付与ができます。この情報も全て一元管理されます。昔ハイライトしまくった論文PDFがどこかに行ってしまい、再ダウンロードで新品になってしまったこと、人によっては何度もあると思います。ReadCubeではこの心配がありません。またAdobe Readerなどでは1色しかハイライトできませんが、ReadCubeでは4色使えます。
加えて右上・左下・下部の各種アイコンから、いろんな機能が使えます。特に便利と感じる機能について、少し詳しく見てみましょう。
- Reference一覧
論文の引用文献を一覧表示してくれます。凄い点は、このリストからたったの数クリックで、ReadCubeを通じて論文が入手できることです(後述)。もちろん、これも元論文と全く同じように管理できます。
- EnhancedPDF作成
リファレンスアクセス機能などをフルに使うには、論文をEnhancedPDF化する必要があります。設定すれば自動でやってくれます(古い論文やフォーマットの無いものは無理ですが・・・)。
EnhancedPDF化すると、論文上の引用番号から直接リファレンスにアクセス出来たり、Author検索が簡単にできるようになったりします。
- 引用フォーマットの出力
ジャーナル毎のフォーマットに合わせた引用を作成してくれます。論文執筆の際にコピペできるので便利です。書式は豊富な種類がダウンロード可能です。
- スナップショットモード
論文を画像として簡単にキャプチャできます。パワーポイントやChemDrawなどに貼り付ける際に便利。他のキャプチャーソフトはもう要りません。
- ハイライトモード
「ドラッグ選択→色をクリック」の過程をすっ飛ばして、どんどんマークしていけます。線引きしまくる人には嬉しい機能です。
④ReadCube上で関連論文をサーフィンします。
ReadCubeの特長として、引用論文や関連論文へのアクセスが簡単にできる点が挙げられます。読んでいる途中にこの引用文献も読んでみたい!となっても、簡単に持って来れます。お気に入り追加もワンクリックで行えるので、「あとで読む」機能として活用しても良いでしょう。
ブラウザ経由よりも手数が少なく、散逸しない!
さて既におわかりのとおり、PDFリーダーにせよブラウザにせよ、以上のプロセスでは一回も起動されません。ReadCubeだけで全てが完結しています。ブラウザ+複数のアプリを使う方法に比べ、ReadCube完結型には以下の利点があります。
- 以前ダウンロードした論文の履歴が残るので、二重ダウンロード(HDDの圧迫・管理の複雑化)が防げる
- ダウンロード論文は一箇所にまとめられるため、バックアップが簡単(Win版デフォルトはドキュメント→ReadCubeMediaフォルダ)
- Pro版であればPDFがクラウドスペースに保存されるので、複数デバイス間での同期も簡単
- 「あとで読む」「お気に入り」「ハイライト・ノート」に関する情報が散逸しない
- クリック数・操作数が少ない
いかがでしたか?ReadCubeを論文特化型ブラウザにしてしまうスタイルは、非常に効果的であることがおわかりでしょう。
今回はここまでにしたいと思いますが、他の便利機能についても順次ご紹介していければと思います。次回もお楽しみに!
関連文献
- “Eight ways to clean a digital library” J. M. Perkel, Nature 2015, 527, 123. doi:10.1038/527123a