文献の検索って手間がかかりますよね。特に論文の参考文献などから必要な文献のHPにたどりつくために、皆さん色々と試行錯誤した経験がおありのことと思います。
だいぶ前になってしまいましたが、ケムステでは文献を探すための便利ツールとしてChemistry Reference Resolverをご紹介しました。もうこれなしでは生きていけないほど馴染んでおりましたが、気がつかないうちに(筆者だけかもしれませんが)色々と機能が進化しておりました。
また、同様の検索サイトx-molが最近登場しました。右上の方にバナーが出ることもあるかと思いますのでお気づきの方もいらっしゃるかもしれません。今回のポストでは使用感や両者の比較、便利な使い方についてご紹介したいと思います。
さて、それではまずx-molの方からご紹介しましょう。
x-molは中国発の化学系ポータルサイトで、ケムステの商売敵とも言えるかもしれません。そのサイトのサービスの一つとして文献検索機能が用意されています。日本語版はその文献検索サイトのみとなっており、右上の中国のマークをクリックすればポータルサイトに行けます。更新頻度もなかなかに高く、ケムステはおちおちしていられない状況かもしれません。
使い方はいたってシンプルで、Chemistry Reference Resolver(以下Chem.Resolver)と全く同じ方式で、例えばジャーナルの名前や略号、年巻ページなどを入力すれば当該文献のページを探してくれてジャンプします。そこにDOIのアドレスを入力することも可能です。
このDOIで行けるというのはなかなか便利でして、Chem.Resolverには無い機能ではないか!と感心したのですが、それは筆者が遅れているだけで、実はとっくにChem.Resolverも対応しておりました(その辺は後述)。まあそれに気づかせてもらっただけでも筆者としては大変ありがたかったので、ベタ褒めと行きたいところですが、率直なレビューをしたいと思います。
Chem.Resolverとx-molの最大の違いは様々なツールが用意されているかどうかが大きいです。x-molはあくまで検索サイトですので、いちいちそこのページにアクセスしたウインドウを開かなければなりません。これはかなり手間と感じます。筆者の仕事用PCはMacでブラウザはFireFoxなのですが、FireFoxのアドオンをChem.Resolverは用意してくれており、ツールバーに検索用のバーを入れています。必要に応じてその欄に文献の略号巻ページをコピペしてエンターを押すだけでジャンプしてくれますので便利です。実はこの機能を使いたいがためにFireFoxを使い続けているように思います。
次に検索からジャンプへの速度ですが、厳密な測定はしておりませんが、若干Chem.Resolverの方が速いように感じます。同じ文献を検索するとキャッシュが働くのか、両者に差は無くあっという間にジャンプします。x-molの速度はまだ改善の余地があるかもしれませんね。
X-MOLをもっと快適に-FireFox編
それでもやはりx-molを便利に使いたい!ということでちょっとした工夫をしてみましたのでいかにご紹介しましょう。
解決したい操作としては、
1,referenceのjournal名、巻、ページが今web上やブラウザに表示している文献中にあり、そこから検索する
2,WordやPDFファイルなどにあるreferenceから検索する
の二つのシチュエーションです。1は例えばケムステ記事の気になった文献などに、2は論文のピアレビューの際などでよくやる操作だと思います。
まずはFireFoxのアドオンを準備しましょう。アドオンを探すページにてContext Searchを検索します。検索結果のリストからContext Search Xを選んでインストールしましょう。続いてAdd to Search BarというアドオンをインストールしてFireFoxを再起動すれば準備完了です。
x-molのサイトに行き、検索窓を右クリックし、出てきたコンテキストメニュー中の「サーチバーを追加」を選んで検索エンジンを追加しましょう。たったこれで終了です。
調べたいreferenceの部分をブラウザ内で選択し、右クリックするとSearch forのところにx-molが追加されていますのでこれを選択すれば、上の1のシチュエーションを解決する方法となります。ちなみに下の図ではChem.Resolverも入っていることからもわかるように、任意の検索サイトを簡単に追加可能です。
次に、上の方のツールバーにある検索窓(窓が無い方は、表示→ツールバー→カスタマイズで検索窓をツールバーに追加して下さい)にgoogleやbingとともにx-molが追加されているはずです。左側の虫眼鏡をクリックしてx-molを選べば文献検索用のツールバーが用意できたことになりますので、PDFファイルなどからreferenceをこの窓にコピペすることで検索ができるようになります。
以上2つの設定によりコンテキストメニューと検索窓を活用してFireFox上でx-molを簡単に使う方法になろうかと思います。これをやればいちいちサイトにアクセスする必要が無くなりますので一手間省けます。検索窓についてはChem.Resolverは専用のツールバーが用意されていますのでそちらの方が便利です。
X-MOLをもっと快適に-Safari編
紹介しましたコンテキストメニューからの検索が便利すぎることも筆者がFireFoxから抜けられない一因です。しかーしこれをなんとかSafariでもできないかなあと思い、重い腰を上げて調べてみました。結論から言えば遜色なくSafariでも使えるようになります。ちょっとだけ準備が面倒なのがたまに傷ですが。こちらの過去記事が参考になります。
早速ご紹介しましょう。Safariの場合は3つのアプリを準備してもらう必要があります。まずはSafariStandという拡張機能ををSafariに組み込みたいのですが、他の拡張機能と異なる方法、すなわちSIMBL もしくはEasySIMBLを使用しなければなりません。Safariのバージョンによって対応するSafariStandとSIMBLが異なりますのでご注意下さい。(筆者のPCはバージョンが古いです)
まずこちらのページにアクセスし、SIMBLもしくはEasySIMBLへのリンクを選んでどちらかを入手しましょう。zipファイルになっていますので解凍後インストールしましょう。
次にSafariStandをダウンロードします。解凍後フォルダ内にSafariStand.bundleというファイルがありますので、EasySIMBLの場合は起動後そのファイルをウインドウにドラッグアンドドロップします。Installed Pluginsの中に表示されればOKです。Use SIMBLのところにチェックを入れておきましょう。
Safariを起動するとメニューに「Stand」という項目が増えています。この「SafariStand Setting」を選択し、QuickSearchタブの
Title欄にお好きな名前を入力し、URLの欄に「http://www.x-mol.com/journal/getSite?option=%s」をコピペしてください(Chem.Resolverの場合は「http://www.chemsearch.kovsky.net/index.php?q=%s」)。
これでコンテキストメニューからの検索の準備ができました。でブラウザに表示されているreferenceの情報を選択後右クリックでコンテキストメニューを呼び出すとQuick Searchの欄にx-molが追加されているはずです。
それでは続いて検索窓によるreferenceの検索法に移りましょう。これは過去記事でのやり方しか見いだせませんでしたので、そちらを復習したいと思います。まずはGlimsを入手し、インストールしましょう。Safariを再起動し、上のメニューからSafari→環境設定と進みます。するとGlimsのタブが追加されているはずです。
左側のカラムから「検索エンジンリスト」を選択し、「追加」をクリックします。名前を入力しクエリURL欄に「http://www.x-mol.com/journal/getSite?option=」を上書きコピペします(#query#の部分は残しておいてください)(Chem.Resolverの場合は「http://www.chemsearch.kovsky.net/index.php?q=」)。「追加」をクリックして終了です。
x-molとGoogle検索の窓を並べることができます
あとはツールバーのアドレスのところにreference情報を入力すれば検索可能になります。アドレスバーの右側のfabiconのところでデフォルトの検索エンジンを選択できます。
しかしこれでは普段のGoogle検索ができなくなるので、いちいち検索エンジンを変更するのが億劫です。というわけで、上部メニューの「表示→ツールバーをカスタマイズ」を選択し、「Stand:Quick Search」の検索バーをツールバーに追加しておきましょう。これをGoogle検索専用の窓にできますので両立可能です。Standの方をx-molの検索窓にしたかったのですが、筆者の力不足で確立できませんでした。ちょっと不格好で申し訳ございません(Chem.Resolverでは検索窓を作る拡張機能が提供されていますので、そちらがスマートです)。
来るか群雄割拠の時代
さてこれで一層オリジナルの検索サイトに行く必要がなくなりましたね。大量のreferenceを調べなければならないときにこれらの検索方法は大変便利です。タブでどんどん増やせるので、バックグラウンドで検索させて後で文献に当たるという使い方がまた便利です。ということでChem.Resolverのサイトに全く寄りつかなくなってしまい、機能の追加に気づくことができませんでした。もうご存じの方ばかりだと思いますが、Chem.Resolverでは改行することで複数のreferenceを一気に検索できるようになっていました。大量にあるreferenceリストをコピペして、不要な著者名などを削除して一気に調べるという使い方が可能なんですね。これはx-molには無い機能となっています。
Shift+Enterで改行すれば複数を一気に検索できるぞ!
初期に比べて対応する論文誌も増え続けていたり、DOI検索ができるようになっていたりで、ご提供いただいている方々には本当に頭が下がる思いです。Chem.Resolverの開発者であるZhurakovskyi博士はウクライナ出身、X-MOLは中国発ということですので我が国もなんだか負けてられない気もしてきますね。
どちらにしても皆さんぜひご活用の上、より快適なchemistry lifeを!
追伸
Windowsユーザーの皆様、ご期待の添えず申し訳ございません。Windowsに精通した方のご寄稿、もしくはスタッフへの応募もお持ちいたしております。
ちなみにChromeでは「Context Menu Search」「Search Bar」という拡張機能が上述の機能を追加できるようにしてくれるようですのでChromeユーザーの方ぜひお試しください。