テルペノイド生合成の原料といえば、イソプレン由来のゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)などが一般に知られています。これらの共通点は、オレフィンの立体が全てE体であるということです。
かつては、テルペンの生合成基質のprenyl derivativeはE体しか存在しないと考えられていました。しかし、数年前にZ体のゲラニルゲラニル二リン酸が見つかりました。その名もネリルネリル二リン酸(NNPP)です!
ちなみにgoogleで「ネリル」と検索すると美少女ゲームっぽい画像が出て来て非常に萎えます。そういえば、以前Niのcyclooctadien錯体を調べようとしてNicodと検索したら「ニコ動祭」が出て来てやる気がそがれたよーな、、、
真面目に仕事している時に、こういうの見ると、、、、、、
話がそれましたが、戻ります。
今回は、ネリルネリル二リン酸を基質とした天然物の生合成研究を紹介します。
“Biosynthesis of Lycosantalonol, a cis-Prenyl Derived Diterpenoid”
Jiachen Zi, Yuki Matsuba, Young J. Hong, Alana J. Jackson, Dean J. Tantillo, Eran Pichersky, and Reuben J. Peters. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 16951−16953. DOI : 10.1021/ja508477e
今回紹介する論文の作者らは、トマト由来の天然物Lycosantalonolの生合成研究を行なっている際にNPPを見つけそうです。ちなみにNPPは Solanum lycopersicum が、z,z-FPPは Solanum habrochaitesが生産しているそうです。
なぜFPPだけ名前が変わらないの?zzつけるだけって、仲間はずれにされているような気が、、、
今回は、いつもよりも少し基本的なことから説明します。まずは、、、トマトですっ!!
トマトとは?
トマトとナスの因縁については、みなさんご存知だと思います。元々リンネはトマトをナス属に含めていましたが、その後トマトは独立を宣言、lycopersicumという独自の属をつくりました。
トマトはトマトか?それともナスの一部か?
こうしたトマトとナスの血縁関係を巡る泥沼化した争いに対し、国際機関が遺伝子鑑定(ゲノムプロジェクト)を行なう事態にまで発展しました!!!
結局現在は、リンネのやり方に戻し Solanum lycoperisicumという学名になりました!
昔、Attack of Tomatoという面白い映画を見た。凶暴化しかトマトが人を襲うという内容だった、、、まあ、、、トマトをなめると痛い目に合いますよ!身近なものでも知られていないことは、まだまだたくさんありますよ。
cis 型のイソプレノイドは以前から知られていた?
cis 型のイソプレノイドの生合成に関わる酵素をcis-prenyl transferases (CPT)と言います。以前から、cis 体のイソプレン誘導体は確認されていたのですが、CPT は C45以上の長鎖のイソプレン誘導体の合成にのみ関わると言われてきました。
今回の論文の新規な点は、cis 体のイソプレン誘導体がテルペノイドの生合成に関わると分かったことです。
トマト内でのテルペノイド合成遺伝子クラスターの発見
彼らは、トマトのゲノムの解析中にNNPP合成酵素を含むクラスターを見つけました。驚くべきことに、彼らはそのクラスター中にテルペン合成酵素SlTPS2と酸化酵素CYP71D51を発見したのです。これはつまり、NNPPが化学変換され、何かしらの天然物が合成されていることを示唆していました。
その後、彼らはNNPP合成酵素であるとテルペン合成酵素SlTPS2 を大腸菌で共発現させることにより、生合成中間体である(+)-lycosantaleneを見つけました。
さらに、酸化酵素CYP71D51も共発現させた所、Lycosantalonolの合成が確認されました。
これにより、cis 体のイソプレン誘導体がテルペノイドの生合成に関っていることが示されました。
もし今後、「テルペノイドの原料はE体しかねえよ!」などと言っている人に出会ったら、顔面にトマトを投げつけてあげて下さい、全力で !!
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参考文献
- Biochimica et Biophysica Acta 2000, 1529, 33-48.