最近めっきり時間の取れなくなったcosineです。今回は薬学系ならではの短めエントリを。
医薬と関わる世界にいると、「生物に効果を与える化合物」にものすごく沢山出会います。これをひっくるめて一般には何と呼んでいるでしょうか。「医薬」ではありません。なぜなら「毒」も含まれるからです。
「生理活性物質」と呼ぶ人が多いと思います。しかし一方では、「生物活性物質」と呼ぶ人もいます。
いやいやどっちも変わんねーじゃん?と思うかも知れません。
しかし実情は少し違います。
実はこの用語は、専門家視点から厳密な使い分けが提案されています。この文章に依れば
生物活性物質:
「毒でも薬でもとにかく生体に作用があれば良いという物質」生理活性物質:
「ある生体のなかに本来存在するもので、その生体のために役立っている物質」
ざっくりいえば外因性か内在性か、という違いがあるのです。
つまり我々が日常使っている医薬品は、ほとんど「生物活性物質」なのですね。英語だとbioactive compoundなので、確かに生物活性と表記するほうが適切にも思えます。いままで漠然と「生理活性物質の全合成」とか書いてしまってた方々、良い機会ですから本当は「生物活性」なのだと心得ておきましょう!
そんな細かい用語の違いなんてどうでもいいだろ?・・・と思われるでしょうが、そこは薬学系ならではのこだわりというか文化なんですね。
薬学視点では「薬=異物」です。化合物が生体から見て異質であるかどうかは、実は分野のアイデンティティにも絡む最重要ポイント。意外に気にされうる観点なのです。
ほとんどの読者の皆さんは薬学外の方でしょうが、そんなこだわりもある世界なのだな、と知りおかれるのも乙なものかと。
筆者自身、薬学部で教育を受けた身ですから、毎回単語をこう直されていました。今は学生の書いてきた単語をこう直す立場。さてさて、これでかのような思想は伝わって行くのだろうか・・・?
案外こういった地味なこだわりから、分野の哲学は根を張っていくのかも知れませんね・・・などとふと思った今日でした。