来月11月9日・10日が待ち遠しくてわくわくしています。ケムステも参戦するサイエンスアゴラ2013開催の日です。当日の「ここがおもしろい!」をより詳しく発信するため、サイエンスアゴラ出展の魅力を、「生活環境化学の部屋」・「日本コンピュータ化学会」の本間善夫先生にインタビューしました。
サイエンスアゴラとは、科学と社会をつなぐ科学コミュニケーション実践のための広場として、科学技術を活用してよりよい社会の実現を目指すイベントです。科学技術振興機構が主催になって開かれます。科学のお祭りです。今年2013年はケムステも参戦します(ケムステ記事「ケムステも出ます!サイエンスアゴラ2013」参照)。
サイエンスアゴラでは、さまざまな人たちが集まって、科学を考え、語り合う「ひろば」となることを目指しています。開催方針には「伝えるとともにつくるへ広げる」という言葉がかかげられています。参加団体どうしのつながりをつくることを目的に、ケムステではインタビューをすることにしました。
そこで、サイエンスアゴラに参加の、ウェブサイト『生活環境化学の部屋』でも有名な本間善夫先生に、インタビューをお願いしました。そして、ありがたいことに、ご快諾いただきました。たいへん感謝しています。初参加のケムステと比べれば、サイエンスアゴラ常連のエキスパートであり、お台場に行ったら行かなければいけないブースのひとつだと個人的には考えています。楽しみ。日本コンピュータ化学会としての参加です。では、本間先生のお話をどうぞ!
パソコン画面上の3D分子を参考に3Dプリンタ製タンパク質模型組み立てにチャレンジする高校生
(サイエンスセミナー in 江戸川大学)
どういう団体での参加ですか?
主催は日本コンピュータ化学会です。名前の通り,コンピュータを駆使して化学しています。ちょうど2013年のノーベル化学賞が計算化学分野の研究の受賞になりましたが,2013年10月14日の日刊工業新聞連載漫画『キラリ研究開発』でそのことと学会のことを紹介してもらうことができました。作者の理系漫画家はやのんさんにはアゴラのトークセッションに急遽飛び入りで参加してもらい,この漫画ができる裏話をしてもらう予定です。
はやのん さんの作品
学会はパソコンが出てきてまだ研究に使えるかどうかわからないような時代からあれこれ試行錯誤していた方々で作られた研究会など複数の源流が集まって結成されました。学会年会の発表分野の内容としては以下のように記載されていて,守備範囲が広いことをおわかりいただけると思います。なお学会誌はJ-STAGE3を利用して会員以外にも無料で全文読んでいただくことができます。
・ 計算化学: 分子軌道法、分子力学法、分子動力学法、モンテカルロ法など
・ 理論化学: 電子状態理論など
・ 情報化学:?データベース、ケモメトリックスなど
・ 数理化学: コンピュータ支援化学教育、その他コンピュータ化学に関する研究発表
サイエンスアゴラには第1回は本間が個人参加,それ以降は学会の有志などでグループ参加,2011年から科学コミュニケーション企画室を立ち上げて学会長の細矢治夫先生(お茶の水女子大学名誉教授)から院生・学生まで参画し,トークセッションに加えてテーブル展示も可能になりました。2012年も出展しています。
2011アゴラ,折り紙指導の細矢先生
会場では何が見どころですか?
テーブル展示では以下のような体験ができ,その一部はトークセッションでも紹介します。広報ページに詳しい内容を追記していく予定です。展示をご覧になったあとも継続して学んでもらえたらと思っています。
・ 細矢治夫?(お茶の水女子大学名誉教授):数学分野でも世界的に有名で折り紙にも熟達されていて(先日『三角形の七不思議』を発刊されました),複雑な多面体の組立て体験ができます。
・ 時田澄男?(埼玉大学名誉教授):国立科学博物館の水素原子の電子軌道展示の監修もされており,会場では美しい原子軌道ガラス内彫刻を使ってビジュアルに説明します。
・ 後藤仁志?(豊橋技術科学大学):PDBの4桁のエントリーIDをカードで組み合わせると対応する生体分子(タンパク質・DNAなど)を拡張現実(AR)分子として表示し,自由に動かせるという人気の展示です。タンパク質とリガンドの”鍵と鍵穴”の関係も拡大してわかりやすく。
・ 神部 順子・八木 徹?(江戸川大学):身近にあるもので,青空や夕焼けの色を体験してもらい,その秘密に迫ります。自然の中に科学が偏在していることを納得してもらえるでしょう。
・ 本間善夫?(サイエンスカフェにいがた,生活環境化学の部屋):分子模型モル・タロウのミニセットの組み立て(お持ち帰りいただけます)と世界中で注目されている川上 勝先生(北陸先端科学技術大学)開発の3Dプリンタによるシリコーン製タンパク質模型で鍵と鍵穴の関係をリアルに体感してもらいます。なお同模型は「現代化学」2013年11月号(特集:3次元の組織・材料を自在につくる 3Dプリンターの可能性)の表紙を飾り,川上先生の解説も掲載されています。
?・ その他,上記『キラリ研究開発』の取材に応じていただいた長嶋雲兵先生(産業技術総合研究所)には展示全般についてわかりやすく説明いただくなど,ここには書いていない体験もできますので是非多数お出かけください。
パソコン・タブレット・スマホの何れでも分子モデルを動かせるWinmostarクラウドα版(約800の分子参照可)もアゴラで紹介します。 開発は、千田範夫さん(株式会社クロスアビリティ)ほかです。
2012アゴラ,テーブル展示。
左上から時計回りに,拡張現実(AR)分子,空の色,原子軌道ガラス内彫刻,3Dプリンタ製タンパク質模型。
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ケムステについて思っていることや気になることがあればひとつお話しください。
立ち上がり当初からアクティブで,学生・院生のエネルギーも巻き込んだ成功例としてずっと注目させていただいています。今回はアゴラにも参加されると言うことで見に行くのをとても楽しみにしています。情報発信は迅速性と継続性が大事だと考えていますので,これからも期待させてもらいます。
サイエンスアゴラで気になる団体を他にひとつ教えてください。
ケムステさんと言いたいところですが,上に書いたので,昨年から出展されている日本蛋白質構造バンク(PDBj)さんが今年は何をやられるか楽しみです。今回のノーベル化学賞受賞者や日本コンピュータ化学会の会員の中にもPDBデータにお世話になっている方が大勢いますし,多くの方に知ってほしいところです。なお,PDBのMolecule of the Monthの日本語版「今月の分子」の翻訳を担当されている工藤高裕先生も昨年に続いてお見えになるようです。化学関連の企画で相互誘導できればと期待しているところです。
文章:本間善夫さん / 文字の色つけ等の整形:ケムステスタッフ
本間先生、インタビューに、ご回答いただき、ありがとうございました。当日は、よろしくお願いします。
サイエンスアゴラ、おもしろそうでしょう。当日は、ケムステと両ブースに、化学好きならばゴーですよ。ご来訪、お待ちしています。