計算化学という分野は、主にPC等の計算機によって分子の構造やその性質、変化等をシミュレーションする、という研究を行なっています。
昔は、計算用のPCも計算用のソフトも非常に高価であったため、専門の研究者がいなければ大学などでも購入しない、というのが一般的でした。しかし、最近では通常のPC程度でも、高分子でなければ比較的信頼性の高い様々なデータを計算によって求めることが出来るようになりました。
ごく最近、さらにその計算化学を手元のタブレットでできちゃう!?という驚愕アプリが登場しました。
それが、iSpartanです。
iSpartanってどんなアプリ?
化学研究者によく使われている分子モデリングソフトウェアspartanの機能を一部アプリに移植したものと考えればよいでしょう。
iSpartanでは、自分で分子構造を作図し、この二次元のスケッチを三次元構造に変換します。その後、配座解析を実施でき、それぞれの状態での構造情報を計測できます。そこから、web上のデータをダウンロードし、NMRとIRのスペクトル、分子軌道、静電ポテンシャルマップ、および原子および分子の各種プロパティ情報にアクセスすることができます。
iSpartanのつかいかた
まずは、iSpartan Appを起動すると、こんな感じ。
図:iSpartanを起動!
インストールて初めて起動したときは左上に構造作図用のメニューがありますが、移動することもできます。
試しにエタノールを描いてみると…
図:エタノールを書いてみました
10秒くらいですぐにできました。
Cのボタンをタップしてから、白いキャンバス上に線をちょっとひっぱるとすぐにCH3-CH3ができるので、片方のCからOをちょっと引っ張るだけでできます。
ここまでできたら、下のバーのなかの3Dボタンをタッチすると、そこからMM法で計算がスタート!
図:計算後すぐに3次元構造が表示される
上図のようにすぐに3次元構造が表示され、くるくる回転させたりして楽しめます。
画面上にいくつかボタンがあります。左側のグループは、左より3D構造表示、配座解析の結果の表示、データベースの検索ボタンとなっています。右側のボタンのグループは、左側から分子軌道、静電ポテンシャル、分子情報、IR、1H-NMR、13C-NMRが表示されるボタンになっていますが、分子情報以外はデータベースからデータを落としてこないとみられませんので、はじめはボタン表示が薄くなっています。
分子を解析してみる
とりあえず、配座解析できたのかみると
図:エタノールの配座
ちゃんと、-OHが回転する2パターンの配座が解析できていました。
ここから、データを検索させてみます。
図:データを検索
すると、物質名が画面下の白いバーに表示され、右上のボタン表示が濃くなり、有効になったことを示しています。
本当にNMRとか見られるのか…と思い、まずはNMRを見てみることに。
図:NMR(1H)を表示させてみる
ちゃんと1H-NMRが表示されるだけでなく、ピークを選択することで、水素の帰属までできています。
ちなみに、一応13C-NMRも見てみると…
図:13C-NMRもバッチリ見れます
こちらもバッチリ。
他も、きっちり確認してみるといろいろとみれることがわかりました。例えば、軌道を表示してからHOMOを選択してみました。
図:エタノールのHOMO
静電ポテンシャルはいかが?でました。
図:エタノールの静電ポテンシャル
続いて、IRスペクトル。iPadでは動画が撮影できないので伝えられませんが、ピークを選択すると分子が振動してなかなか面白いです。
図:IRスペクトル。ピークを選択するとその部分が振動します
分子情報はこんな感じで、分子内の原子間距離なども詳細に表示されています。
ちなみに、どこのページでもキャンバス上の右上のボタンを押すことで、データの保存や送信ができるというすぐれもの。
図:表示された分子を様々な方法でアウトプット
もうちょっと触ってみます
じゃあ、次にリモネンでも作ってみようかな、と思った私ですが…
図:リモネンを書いています。
途中まで構造を覚えていたのに、最後肝心なところを忘れてしまった… なんてこと、ありますよね?
そんなときのための、?ボタン!
これを使って…
図:わからないところを?にしてみると
こんな感じに構造を作ります。ここから、画面下のボタン左から3つ目のSearchをタップ! すると…
図:リモネンがでた!
不明な部分に色々な置換基を含む化合物の一覧が表示され、その中にちゃんと目的のLimoneneが!いやー、忘れっぽい私には大助かりの機能ですね。
ここまでできて、お値段たったの1700円!! 今後リリースされるiSpartan Server(win/mac)によって、自分でデータを計算し、cloud上のデータを増やすこともできるようです。
複雑な分子も問題なし
ちなみに、もう少し複雑な分子ストリキニーネも作ってみました。構造も数分でささっと。
図:ストリキニーネを書いてみました
さすがに、3Dモデル表示には10秒くらいかかりました。
図:分子モデルを表示
配座解析には、1分半ほど。
図:計算後
ストリキニーネのデータがクラウド上になかったのが残念!ですが、分子情報の一部はちゃんと表示できました。
というわけで教育的にも使えそうな予感満載のiSpartan。購入は、こちらから。