ChemDoodleというソフトウェアをご存知ですか?2008年にリリースされた iChemLabs開発の構造式を書くためのソフトですが、これにはスマートフォンやiPadなどのタブレットで利用できるモバイル版が存在します。
構造式を書くモバイルアプリなら、ChemSpiderなどの有名なものもありますが、このアプリはそれとも一味違います。これの他と異なるすごいところはなんと!書いた構造式のNMRスペクトルをシュミレーション(予測表示)してくれるのです!
今回はそのモバイル版ChemDoodleについて、ご紹介したいと思います。
まずiPhoneでアプリをダウンロードして開いてみました。すでにChemDoodleのアカウントを持っている場合は、それを入力することですべての機能をもつ完全版を使うことができます。
もし、アカウントを持っていない場合は、描いた構造式を保存することができませんが、Guestアカウントを入手することができるため、一通りの機能を試しに利用することができます。
下の図はアプリを起動したときのスクリーンショットです。ここで構造式を書きます。構造式を書くのに必要なことは一通りでき、テンプレートも環状炭化水素が少しあります。
いざ開くとなにを描こうか迷いましたが、とりあえず筆者が初めて合成した化合物ということで、ポルフィリンを描いてみました。
こんな感じに書けました。iPhoneだと図が細かくて、違うところに炭素がくっついたりしてフラストレーションがたまりますが、そこはズームしながら描くことで乗り切りました。タブレットだと画面が大きいので使いやすいかもしれませんね。
画像上部のボタンにポリ容器のアイコンがあります。これは描いた構造式をクリアするボタンです。これで「洗い流す」というわけです。こんなかわいらしいUIとなっています。
そんなクリアボタン隣のアイコン「アイロンマーク」はなんだ…?と思って押したところ、書いた構造式の原子間距離を調節し、適当な配置に並べ替えてくれました。まあたしかにアイロンの機能にあっていますね。洒落のきいたアイコンです。
一番右のファイルボタンを押すと検索フォームが出てきて、様々な構造式を読み込むことができます。時々、原子配置が不思議なことになっているものや、余計な置換基がついたものが出てきますが…まあ良いでしょう。
三次元的なものもいけるのか…?と思いフラーレンを入力してみましたが、難なく描き出すことができました。
そして注目のNMRチャート推測機能ですが、先ほどのポルフィリンで試してみましょう。画像下のタブにある「Spectra」ボタンを押すと、ポルフィリンのNMRが算出されました。
1Hおよび13CNMRスペクトルが描かれます。スマートフォンのアプリであるにもかかわらずいい推測値が出ています。スペクトルが読みにくいときは、グリッドを入れたり、拡大することもできます。拡大するとスペクトルの先端がきちんと対応するカップリングで枝分かれしていることもわかりました。ぬかりないですね。
Calculateボタンを押すと、分子量や分子式はもちろんのこと、他にもMASスペクトル、水素結合受容体&供与体数、平均分極率なども調べてくれます。
携帯にこれほどの機能のアプリを入れられるのはすばらしいですね。これならばPCが開けないときでも、ちょっとスペクトルの確認をしたいときや、大学生ならレポートを書くときにも手軽に使えそうです。
PC版は有料版とお試しの無料版が出ており、もちろんよりさまざまな機能が使えます。モバイル版の対応機種はiOS、Androidなので、是非ダウンロードしてみてください。
構造式を書いてはNMRを試してみるのが楽しくて色々といじくっていたら、いつの間にか携帯の電池がなくなっていました…。
みなさんも電池残量に気を付けつつ使ってみてください!