[amazonjs asin=”4320005953″ locale=”JP” title=”これから論文を書く若者のために 究極の大改訂版”]
[追記] 2015年改定されたばかりです。
『これから論文を書く若者のために』、縮めて「これ論」。
この書籍には、標題(タイトル)・導入(イントロダクション)・結果(リザルト)・考察(ディスカッション)それぞれで、何を書くべきか、どうしてそのように書くべきなのか、理念がユーモアあふれる構成でまとめられています。学術論文では何を書くべきなのかを解説した本であり、論文で用いる文章表現・英語表現を解説した本とは、一線を画します。
執筆開始から掲載決定まで、なかなかに長いです。しかし、学術研究は発表してナンボ。しっかりいい仕事をまとめたいものです。
できそこないの仕事をいい論文かのようににまとめるというのは見る人が見れば分かってしまうのでほとんどできませんが、悲しいかな、いい仕事なのにできそこないの論文にしかまとめられなかったというのは気を抜けば割と簡単にできてしまいます。いい仕事をいい論文にまとめるにはどうしたらよいのでしょうか。
構想練ったら雑誌を決めよう 必ずあそこに載っけるぞ |
タイトル短く中身を要約 書き手のねらいをわからせよう
イントロ大切なにをやるのか どうしてやるのか明確に
マテメソきちっと情報もらさず 読み手が再現できなくちゃ
いよいよリザルト中身をしぼって 解釈まじえず淡々と
山場は考察あたまを冷やして どこまで言えるか見極めよう
関連研究きちっと調べて 引用するときゃ正確に
本文できたらアブスト書こうよ 主要なフレーズコピーして
複雑怪奇な図表はいけない 情報減らしてすっきりと
文献集めと文献管理は 日頃の努力が大切だ
完成したなら誰かに見せよう 他人のコメント必要だ
お世話になったらお礼を言わなきゃ 一人も残さず謝辞しよう
最後の仕上げは英文校閲 英語を磨いて損はない
いよいよ投稿ファイルを確認 ネットにつなげて慎重に
いつまで経っても返事が来なけりゃ 控えめメールで問い合わせ
レフリーコメントなるべく従え できないところは反論だ
リジェクトされても挫けちゃいけない 修正加えて再投稿
このうた歌えば必ず通るよ 自分を信じてがんばろう
論文出たなら宣伝しなくちゃ 別刷り抱えて出かけよう
引用:『これから論文を書く若者のために』の目次より .
参考:筆者ウェブページ .
わたしGreenは、とくに、論文のタイトルの書き方の項目が秀逸で、とても勉強になったと感じました。論文、ということにこだわらずとも、キャッチーなタイトルというのは、ケムステで記事を書いていて気になるもの。ほんの一部だけ紹介させていただきたいと思います。
出会いはタイトル
論文との出会い。「おおっすげぇ!」と感じたときのことを思い出してください。きっかけは何でしたか。圧倒的に多いのはタイトルだと思います。まずはタイトル、そしてアブストラクトをざっと読んで興味を持てばPDFを手に入れておこう、となります。そして、これ論にもこう書かれています。
>論文を読んでもらえるかどうかを決めてしまうほどの力を(タイトルは)持っている
確かに、先月わたしGreenが読みたいと思って手に入れた論文の過半数は、タイトルがきっかけになって出会ったものでした。
タイトルに入れるべき3つの情報
わりと文面を割いて書かれている項目。それは、良いタイトルとは何かです。分かりやすく、興味を惹くタイトルであることに加えて、タイトルを読んで…
>論文の中身が想像できる
ことが大切だと、これ論には書かれています。
いわく。情報をわざと伏せて読者に何だろうと思わせるのではなく、興味は論文の中身そのもののちからで呼び起こすべきです。確かに、タイトルを見て、アブストラクトをチェックして、期待と違った、というのは、読み手としてあまり嬉しいものでもありません。
もちろん、タイトルに情報をすべて詰め込むという意味ではありませんが、タイトルには論文で言いたい最も大切なところを盛り込むべきです。その最も大切なところというのは、一般論として抽象的な言葉で語られるものではなく、その論文がその論文として特徴づけできるような具体的な言葉で語られるはずです。そして、そのためには、とくに、取り組んだ問題、着眼点、研究対象は必ず盛り込むように、と主張しています。
どのような人に読んでほしいのか考えて言葉を選ぶ
また、論文のタイトルに使う語句は、論文に興味を持つ人による検索には必ずかかるような具体的なものにします。論文のストーリーの中で、最重要なキーワードは忘れず盛り込みます。興味を持つであろう人が、聞いたことはあるだろう語句は、わざわざ言い換える必要がなく、目を引くようにはっきり書きます。
インターネットでの文献検索を意識して言葉を選ぶ
具体的な言葉を選ぶことに加えて、読み手の関心に注意を払うことも重要です。例えば、インパクトファクターが同じくらいのPNASと、JACSおよびACIEを比べてみましょう。PNASは総合誌、JACSやACIEは化学の専門誌で読者が違います。好まれる題材や、書き方もおのずと違ったものになるはずです。試しに、タイトルに「Total synthesis」の語句がある論文を検索してみると、PNASでは、どういう着眼点で全合成に取り組んだのか特徴づけに多くの言葉が割かれています。シンプルなタイトルで、グラフィカルアブストラクトを見ての通り構造がユニークだから合成したというタイプの論文は、JACSやACIEに多いようです。
思ったままに率直な感想文を書いてみましたが、どうでしょうか。Greenの気まぐれでアレンジした二次情報ではなく、しっかり筋の通った一次情報を確認したい方は、まずは書店で手に取ってみることをおすすめします。これから論文を書こうと言う若手研究者、新たに指導教官になり理論武装したい方はもちろんのこと、牛タン好き、サッカー好きは、ユーモアを楽しみながら読めること間違いなしです。